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ネコの住所録31

时间: 2020-02-08    进入日语论坛
核心提示:噂好きの猫先日、テレビで「日本猫の尻尾はなぜ短いのか」というテーマを放送していたので、チャンネルをまわしてみた。昔、猫は
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噂好きの猫

先日、テレビで「日本猫の尻尾はなぜ短いのか」というテーマを放送していたので、チャンネルをまわしてみた。昔、猫は尻尾の長いのが一般的だったのだが、猫は歳をとると人間の言葉を理解するようになり、そのうち長い尻尾が二つに分かれて、人間を化かすと言われるようになった。いわゆる猫股である。それで尻尾の長い猫は猫股になりやすいから敬遠され、尻尾の短い猫が珍重されたらしい。うちの母親も尻尾の長い猫は、ちゃぶ台のそばを歩くと、尻尾の先で台の上を撫でるのでよくないといっていた。うちにいたトラ一族はみんな尻尾が短く、母親は、
「こういう猫がいちばんいいの」
と飼い主の欲目で、トラ一族を誉めたたえていたのである。
番組を見て驚いたのは、昔の人々が、
「猫は歳をとると人間のことばを理解する」
といっていたことである。長屋のおかみさんや、八っつあん、熊さんも、飼い猫の「たま」が歳をとるにつれて、恐ろしいくらいに人間のことばを理解するのを見て、かわいいと思う反面、内心、薄気味悪がっていたのだろう。
十年ほど前のことだから、今はもういないだろうが、当時、私の実家の近所の八百屋さんでメス猫を飼っていた。母親とふたりで買い物にいったとき、何気なく店の奥をみたら、店から部屋に入るあがり框《かまち》に、真っ白い小柄な猫が、ちんまりと置き物のように座っていた。
「あっ、猫がいる」
と声をあげたら、おばさんは、
「ええ、これはもう化け猫なんですよ」
と困ったような顔をした。シロという名の小柄な猫は、その家の息子さんが生まれる前から飼われていて、二十五年も生きている、お婆さんだったのである。
シロはふだんはずっと、家の奥の座敷で寝ている。長寿のお祝いとして、おばさんが小さな紫色の縮緬《ちりめん》の布団を縫ってやったら、それがとても気に入って、日がな一日、その上で寝ている。ところが、そのシロがふっと起きることがある。それは猫好きのお客さんが店にきたときである。別に寝ているのを起こしもしないのに、どういうわけだかお客さんが猫好きだと察知すると、あがり框に座って、
「私を紹介して」
といいたげに、じっと待っているという。知らん振りをしていると、苛立《いらだ》ったように、
「ニャア」
と鋭く鳴いて自分をアピールする。その声に負けたおばさんや息子さんが、シロを抱き上げて、
「二十五年、生きている猫なんですけど」
とお客さんに紹介する。そうしてもらうとシロはやっと納得して、座敷にひっこむのであった。
「はいはい、わかりましたよ」
息子さんがシロを抱きかかえて見せてくれた。私は今まであんなにきれいな、神々《こうごう》しい猫を見たことがなかった。体はとても二十五年生きていたとは思えないくらい、銀色と白の間のような、ものすごくきれいな毛並みをしていた。目はほとんど見えず、うさぎのような赤い目だ。品のいい顔をしていて、私が、
「きれいだねえ」
といって体を撫でてやると、おとなしく声のするほうに顔を向けていた。
「はい、おしまい」
二、三分ほど体を撫でまわしたあと、息子さんがあがり框にシロを置いてやると、彼女はそのまま奥にはいってしまい、二度と出てこなかった。食事は一日におちょこ一杯のおかゆだけ、という話を聞くと、まるであの猫は仙人ではないかという気になってきたのである。
「でも、どうして化け猫なの」
母親がたずねると、おばさんは、
「だって、噂話が大好きなんだもの」
と笑っていた。婆さん猫のシロがいちばんの喜びとしているのが、町内の噂話だというのだ。
あるとき、おばさんと息子さんが、食後、お茶を飲みながら、雑談をしていた。傍らでは、紫の座布団の上で丸まって寝ているシロがいる。話をしているうちに、話題は町内の噂になった。
「団子屋のおやじが、どうも浮気をしているらしい。相手は隣の駅前の飲み屋の若い女の子という話だ」
などといってふと横を見たら、さっきまで寝ていたはずのシロが起きてきて、耳をぴんと立て、二人の話をふんふんとうなずいて聞いていたというのであった。
「何やってんの、あんたは」
とシロにいったら、寝ぼけたような素振りで、紫の座布団の上に戻って丸まってしまった。そのときはそれほど気にとめていなかったのだが、それから町内の噂話をするたびに、死んだように眠っていたシロがむっくりと起きてきて、耳をそばだてて話を聞いていることに気がついたのである。
わざと噂話をしたこともあった。最初は、
「明日は晴れるかねえ」
というたわいもない話である。そしてシロの姿を横目で見ながら、
「魚屋さんの息子、高校に受かったのはいいけど、裏口だったらしいわよ」
「電気屋さんの夫婦は、どうやら離婚するらしいね」
などといいながら様子をうかがっていたら、今まで寝ていたシロがふっと起きてきて、いつものようにそばに寄ってきて、片耳をぴんと立てて、ふんふんと話を聞いていたというのだ。
「まったくねえ。噂話をしているときだけそうなんですよ。いったいあんな話、聞いてどうしようっていうんですかねえ」
息子さんも首をかしげていた。私と母親は帰り道、ああいう化け猫はすきを見て家を抜け出し、町内の猫が集会を開いているときに、御隠居さん的立場で登場し、
「うちの飼い主が、あんたんとこの夫婦は、別れるんじゃないかっていってたよ」
と、年下の猫たちに、町内の人間情報を教えているのではないか。そして情報収集の方法などを伝授しているのではないかと話し合った。シロの尻尾が長かったかどうか、私の記憶はさだかではない。
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