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ネコの住所録33

时间: 2020-02-08    进入日语论坛
核心提示:カメは万年魚関係のペットショップの店頭に、「スッポンの子、一匹二千五百円。二匹お買い上げの方は、二匹で三千五百円」という
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カメは万年

魚関係のペットショップの店頭に、「スッポンの子、一匹二千五百円。二匹お買い上げの方は、二匹で三千五百円」という張り紙がしてあり、その下に小さな水槽が置いてあった。のぞき込むとそこには二匹のスッポンの子が、のたのたと歩いていた。スッポンなんて鍋の中でぐつぐつ煮えているのしか知らない私は、二匹買うとダンピングしてしまう悲しい性《さが》のスッポンの子を、ついつい眺めてしまった。他にもゼニガメ、ミドリガメが売られていたが、さすがに子供とはいえ、スッポンは他のカメより凶暴のように見えた。ちっこいくせにあの独特な形の頭をぐいーっとのばし、
「おれはスッポンだ」
と誇示しているかのようであった。いくら二匹だとダンピングするとはいえ、こんなものを飼ってどんどん大きくなり、寝ているうちに噛みつかれていたりしたら、目もあてられない。それにいい歳をした独身女が、カメ二匹を大切に飼っているというのも、ちょっと問題があるような気がする。私は、
「おれはスッポンだ」
といばっている彼らを後に、
「こんなの買う人がいるのかなあ」
と思いつつ、その場を立ち去ったのであった。
小学生のとき、ミドリガメを飼うのが流行《はや》ったことがある。飼っているミドリガメのタロウを教室に連れてきて、自慢する男の子まで出てきた。彼はお母さんに反対されたのだが、タロウをシャツのポケットに隠して、連れてきたのだった。机の上に置くとタロウはのそのそと歩きまわった。短い手足をぱたぱたさせ、口を真一文字に結んで歩く、タロウの姿はなかなかかわいいものだった。
「こうすると面白いんだぜ」
彼はタロウをひっくり返した。私たちがじっと見ていると、タロウは、
「えらいこっちゃ」
という雰囲気で、すぐ首をぐいっとのばし、体を半回転させて、元の体勢に戻った。そして何事もなかったかのように歩き始めた。
「すげえなあ」
「なっ、すげえだろう」
彼はまたタロウをひっくり返した。しかしそれにもめげずに、タロウは体を半回転させて元どおりになった。
「おれも、やりたい」「私も」
かわいそうに、何度ひっくり返されても、半回転して元に戻るのがばれてしまったタロウは、私たちガキどもに、何度も何度もひっくり返された。元に戻るたびに私たちの拍手を浴びたものの、拍手が彼の元気づけになるわけでもなく、タロウはそのうちに力尽きて、あおむけになったままぐったりしてしまったのである。あわてたのは飼い主である。自分が率先してやったくせに、
「タロウが死んだら、お前たちの責任だ」
と涙目になって絶叫した。私たちはタロウが死んだ責任をとらされたらかなわないと、そろりそろりとその場を離れようとした。そのときひとりの子が、
「平気だよ。カメは一万年生きるって、おばあちゃんがいってたぞ」
といった。私たちはそれを聞いて何となくほっとした。そしてカメ騒動は先生の知るところとなり、それ以来、我が小学校ではミドリガメ携帯禁止令が出されたのである。
私も彼の真似をして、ミドリガメを飼ったことがあるが、一週間で死なせてしまった。ところが私の友だちが飼ったカメは、十年以上生きていた。大学生のとき彼女の家に遊びに行ったら、カメは小さな水槽にいれられて、廊下の隅にじゃまくさそうに置いてあった。最初は体長五センチくらいの、かわいい子だったのに、体長が二十センチにもなってしまい、そのうえ、横からみると甲羅側と腹側、両方に肉が盛り上がった、どらやき状態の肥満体型になっていた。それだけでなく、甲羅の亀甲のひとつひとつにも隆起がみられ、甲羅に無数のこぶができているようにもみえた。そこにいるのはカメと知りつつも、
「何じゃ、こりゃ」
といいたくなるような、奇怪な生き物と化していたのである。
「いろんなものをたくさん食べたもんだから、こんなになっちゃったの」
友だちはため息をついた。そのカメは身動きもせずに、私たちを横目でじろっとにらんで、貫禄を見せていた。
彼女のお母さんが冷蔵庫のドアを開け、中からプリンを取りだして、ばたんと閉めた。そのとたん、今まで死んだみたいにじっとしていたカメが、ものすごい勢いで立ち上がった。そして水槽の壁に両前足をつき、ぐわっと大口をあけたまま天を仰いでいるではないか。そしてその姿勢を何分もくずさないのである。私はただびっくりしていた。それを見たお母さんは、
「本当にいじきたないんだから」
と憎々しげにいい、ドッグ・フードの缶詰と割り箸を持ってきた。そして中身を割り箸でつまんで、カメの口の中に落としてやると、カメはそれをがつがつと咀嚼《そしやく》し、途中でやめると、手足をばたばたさせて、
「もっとくれ」
と催促しているのであった。当初は塩抜きしたシラスなどをやっていたのだが、動物の世話係のお母さんが、たまたま犬が残したドッグ・フードを、ミドリガメにやってしまったのが間違いのもとだった。ドッグ・フードの味を知ってからというもの、カメは淡白な味のものを食べなくなったのである。食べ残したドッグ・フードは冷蔵庫にいれられ、カメの餌になる。だからドアの開閉の音がすると、自分にも餌がもらえると頭にインプットしたカメは、音がするたびにばっと起き上がって、準備万端整えて待っているようになってしまった。
「化け物みたいで気持ち悪いから、石神井公園の池に置いてきちゃおうかと思っているの」
お母さんは自分のまいた種とはいえ、心底、奇怪な姿になったミドリガメのことを、嫌っているようだった。「カメは万年生きる」と喜ばれるものだが、長生きしても全然喜ばれないカメもいるということを、私はこのとき知ったのだった。
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