その後、だんだん年をとってくると私も彼女も開きなおって、
「短足が何だ! カブが何だ! 女の魅力は中身だ」
とむなしく絶叫しながら毎日を過ごしていた。彼女のほうはダンナもみつかり、一人確保したので短足なんかどうでもいいわいとドカッと主婦の座に座ってしまった。独身の私も肉がシボんでカブからダイコン程度になり、まあ体重も平均になりというところで、とりあえず妥協できる肉体となった。カブ足のころはあっちこっちの洋服屋をみてまわった。少しでも足が細くみえるようにと必死だった。しかし今のように明らかに体型が安定してしまうと、ウィンドーショッピングなんて面倒くさくてしょうがない。私はもともと何もしないで家の中でゴロゴロしながら本を読んでいたいというズボラな人間であるから、こまめに安い服を捜して歩くというのが苦手なのだ。だから靴と服は行きつけの店をきめていてそこでしか買わない。私がボーッと立っていると店員さんが適当にみつくろってもってきてくれるという、この上もなく安楽な方式である。
先日、その店へいったら店員さんが、
「ちょっと今までとイメージを変えてみませんか」
と興味がわくような発言をした。
「えっ、どういうふうにしたらいいんですか」
「たとえばスカートもプリーツばっかりはいてるからセミタイトにしたりとか、キュロットにするとか。気分が変わりますよ」
というのである。私の頭に浮かんだのは、�タイトスカート�だった。私はカブ足のおかげで、スソ幅の狭いものは全くダメだった。しかし今はやっと普通サイズになった。もしかしたらタイトスカートが似合うようになっているかもしれない。これは一度試着してみっかという気になり、
「あのー、私、タイトスカートをはいてみたいんですけど」
というと、店員さんは、
「あ、それならこれがいいですよ」
モスグリーンで脇に八センチ程のスリットのあるお洒落っぽいタイトスカートをもってきた。
「あのー、私でもそういうのはけるでしょうか」
「スリットがあるから大丈夫、大丈夫、ちょっとはいてみて下さいよ」
私は狭い試着室でモソモソしながらスカートをはいた。鏡をみてビックリした。ものすごく丈が長くて、それを着た私の姿は根性のないスケバンのようだった。
「何か……とても似合わないみたい」
と私がいうと店員さんはフンフンと鼻歌をうたいながら、
「ちょっとピンでとめてみましょうね」
と裾上《すそあ》げをはじめたとたん、
「あらー」
そういって急に黙ってしまった。どうしたのかと思っていたら、
「裾上げたらスリットがなくなっちゃった」
とつぶやいた。私は筒のようなスカートを下半身にはめたまま、ただそこに立ち尽くすしかなすすべを知らなかった。
「短足が何だ! カブが何だ! 女の魅力は中身だ」
とむなしく絶叫しながら毎日を過ごしていた。彼女のほうはダンナもみつかり、一人確保したので短足なんかどうでもいいわいとドカッと主婦の座に座ってしまった。独身の私も肉がシボんでカブからダイコン程度になり、まあ体重も平均になりというところで、とりあえず妥協できる肉体となった。カブ足のころはあっちこっちの洋服屋をみてまわった。少しでも足が細くみえるようにと必死だった。しかし今のように明らかに体型が安定してしまうと、ウィンドーショッピングなんて面倒くさくてしょうがない。私はもともと何もしないで家の中でゴロゴロしながら本を読んでいたいというズボラな人間であるから、こまめに安い服を捜して歩くというのが苦手なのだ。だから靴と服は行きつけの店をきめていてそこでしか買わない。私がボーッと立っていると店員さんが適当にみつくろってもってきてくれるという、この上もなく安楽な方式である。
先日、その店へいったら店員さんが、
「ちょっと今までとイメージを変えてみませんか」
と興味がわくような発言をした。
「えっ、どういうふうにしたらいいんですか」
「たとえばスカートもプリーツばっかりはいてるからセミタイトにしたりとか、キュロットにするとか。気分が変わりますよ」
というのである。私の頭に浮かんだのは、�タイトスカート�だった。私はカブ足のおかげで、スソ幅の狭いものは全くダメだった。しかし今はやっと普通サイズになった。もしかしたらタイトスカートが似合うようになっているかもしれない。これは一度試着してみっかという気になり、
「あのー、私、タイトスカートをはいてみたいんですけど」
というと、店員さんは、
「あ、それならこれがいいですよ」
モスグリーンで脇に八センチ程のスリットのあるお洒落っぽいタイトスカートをもってきた。
「あのー、私でもそういうのはけるでしょうか」
「スリットがあるから大丈夫、大丈夫、ちょっとはいてみて下さいよ」
私は狭い試着室でモソモソしながらスカートをはいた。鏡をみてビックリした。ものすごく丈が長くて、それを着た私の姿は根性のないスケバンのようだった。
「何か……とても似合わないみたい」
と私がいうと店員さんはフンフンと鼻歌をうたいながら、
「ちょっとピンでとめてみましょうね」
と裾上《すそあ》げをはじめたとたん、
「あらー」
そういって急に黙ってしまった。どうしたのかと思っていたら、
「裾上げたらスリットがなくなっちゃった」
とつぶやいた。私は筒のようなスカートを下半身にはめたまま、ただそこに立ち尽くすしかなすすべを知らなかった。