しかし、なかにはどんなおかずでもみんなに配り終わってあまるとまたそれをもらいにいく子もいた。私は横目でみながら、
「どういう胃袋してるんだろう」
と信じられなかった。そして私にはもう一つニガテなメニューがあった。それはオデンだった。ところが私はいちおうチビ太としてふるまわなければならないという義務がある。そこでもと子分の逆襲がはじまったのであった。家で作ったのは平気なのに、アルミの皿の上でゴロッとしている大根やちくわやコンニャクをみていると食欲を失ってしまう。憎らしいオデンどもを糸目でじーっと見ていると、こうるさいおそ松がやってきて、
「おっ、チビ太、どうして喰わねえの?」
などという。無視していると、
「チビ太ってオデンが大好きなんだよなぁ」
とカラ松がいう。
「いつもコンニャクとハンペンと揚げボールを串にさして、それ持ってケケッといいながら走りまわっているじゃないかぁ」
と大声でいった。クラスの子がドーッと笑った。私はずーっと黙っていた。内心くそっと思っていた。私はこいつらに元来バカにされる立場ではないのである。小学校にあがったころはよかった。どいつもこいつも弱虫でちょっと足をケッとばすとピーピー泣き、クワガタ採りにいってもこわがって木に登れないのだった。そういう彼らのお尻をころがっている棒でつついて、
「ホレ、登れ登れ」
などといたぶっていたのが夢のようだった。あれから三、四年しか経っていないのに、たかが給食のオデンが食べられないというだけでクラス中の笑い者になるなど思ってもみなかった。明らかに私はチビ太とよばれて小バカにされていたのであった。
私は先割れスプーンをとり、プルプルと皿の上で逃げる白いコンニャクを二つに切った。ヤケクソになって口の中に放りこんだ。するとカラ松が、
「あっ、喰った喰った、ホレ、ケケッて喜べよ、チビ太よォ」
と私の背中をつついていった。�この野郎�と内心思ったが、私が向かっていくには敵はあまりにもデカくなりすぎていた。私はオデンを食べている間、ひたすら彼らを無視した。
「いつか絶対やっつけてやるからな」
と学校からの帰り道、こぶしを握りしめて心に誓ったのではあるがそれ以来全くそういう機会は訪れず、私はチビ太という渾名がつけられたことによって、女ガキ大将の座からひきずりおろされたということをむなしく悟ったのであった。
「どういう胃袋してるんだろう」
と信じられなかった。そして私にはもう一つニガテなメニューがあった。それはオデンだった。ところが私はいちおうチビ太としてふるまわなければならないという義務がある。そこでもと子分の逆襲がはじまったのであった。家で作ったのは平気なのに、アルミの皿の上でゴロッとしている大根やちくわやコンニャクをみていると食欲を失ってしまう。憎らしいオデンどもを糸目でじーっと見ていると、こうるさいおそ松がやってきて、
「おっ、チビ太、どうして喰わねえの?」
などという。無視していると、
「チビ太ってオデンが大好きなんだよなぁ」
とカラ松がいう。
「いつもコンニャクとハンペンと揚げボールを串にさして、それ持ってケケッといいながら走りまわっているじゃないかぁ」
と大声でいった。クラスの子がドーッと笑った。私はずーっと黙っていた。内心くそっと思っていた。私はこいつらに元来バカにされる立場ではないのである。小学校にあがったころはよかった。どいつもこいつも弱虫でちょっと足をケッとばすとピーピー泣き、クワガタ採りにいってもこわがって木に登れないのだった。そういう彼らのお尻をころがっている棒でつついて、
「ホレ、登れ登れ」
などといたぶっていたのが夢のようだった。あれから三、四年しか経っていないのに、たかが給食のオデンが食べられないというだけでクラス中の笑い者になるなど思ってもみなかった。明らかに私はチビ太とよばれて小バカにされていたのであった。
私は先割れスプーンをとり、プルプルと皿の上で逃げる白いコンニャクを二つに切った。ヤケクソになって口の中に放りこんだ。するとカラ松が、
「あっ、喰った喰った、ホレ、ケケッて喜べよ、チビ太よォ」
と私の背中をつついていった。�この野郎�と内心思ったが、私が向かっていくには敵はあまりにもデカくなりすぎていた。私はオデンを食べている間、ひたすら彼らを無視した。
「いつか絶対やっつけてやるからな」
と学校からの帰り道、こぶしを握りしめて心に誓ったのではあるがそれ以来全くそういう機会は訪れず、私はチビ太という渾名がつけられたことによって、女ガキ大将の座からひきずりおろされたということをむなしく悟ったのであった。