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撫で肩ときどき怒り肩34

时间: 2020-02-08    进入日语论坛
核心提示:わが母のあこがれ「兼高かおる世界の旅」先日、家で原稿を書いていたら、母親から電話がかかってきた。「おねえちゃん、元気? 
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わが母のあこがれ「兼高かおる世界の旅」

先日、家で原稿を書いていたら、母親から電話がかかってきた。
「おねえちゃん、元気? 忙しそうじゃないのォ!」
相変わらず元気いっぱい。彼女は私のことをおねえちゃんと呼び、事あるごとに電話をかけてくるのである。
「何よ、いったい」
私は右手の万年筆で原稿用紙の枡目《ますめ》を埋めつつ、左手で受話器を握り、聞いていないが聞いているふりをする。
「あのねぇ、あたしねぇ、グフフフ……」
だいたい母親がこういう態度をとると、ろくなことがない。このあいだだって電話の向こうで一人でグフグフやっているので、気持ち悪いなあと思っていたら、
「あのねー、あたしねー、またプロポーズされちゃったのよねぇ。これで三度目じゃない。だからおねえちゃんに電話するのも悪いかなあって思ったんだけど、やっぱり相談するのはおねえちゃんしかいないから……」
などと、とんでもないことをいい出したのである。
「あっそ。それはよかったわね!」
とたんに私の機嫌が悪くなるのは当然のことである。十一年前に離婚してからというもの、中古の五十女が三度もプロポーズされ、新品同様の私になぜそういうことが起きないのかと思うと、親と子の立場を越えて腹は立つばかりである。
「何だ、また男か?」
「あーら、いやあねぇ、そうじゃないのよ。あたし、今度スイスに行くんだよねー、グフフ」
またここで別の嫉妬心《しつとしん》が頭をもたげる。海外旅行をしたいしたいと思いつつ、毎日背を丸めて原稿を書いているというのに、どうして毎日能天気に暮らしている母親がスイスに遊びに行かねばならないのか。たしかに離婚してからというもの、私は母親に対して、子供さえ産まなければ何をしてもいい、これまで苦労したのだから、独り身になって好きなことをやればよいと思っていたのだが、あまりに好き勝手なことをされると、こちらはうろたえるばかりである。母親の話によると、勤め先の上司と喧嘩《けんか》して会社をやめてしまったので、そのウサ晴らしに友だちと行くのだという。
「だって、あたし生まれて初めてなんだもん」
と、子供のようにはしゃいでいる。そうだ。母親は五十四歳にしてはじめて海外旅行に行くのである。
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