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撫で肩ときどき怒り肩35

时间: 2020-02-08    进入日语论坛
核心提示:あこがれの海外旅行 母親は昔から海外旅行にあこがれているようだった。いつも日曜日の朝、「兼高かおる世界の旅」を観ていた。
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あこがれの海外旅行

 母親は昔から海外旅行にあこがれているようだった。いつも日曜日の朝、「兼高かおる世界の旅」を観ていた。番組を観ながら、まだ寝ボケてボーッとしている私にむかって画面を差し示し、
「ほらみてごらん。あの兼高かおるさんっていう人がいるでしょう。あの人は自分がこういう仕事をしたいと思って一生懸命勉強したから、女の人でもここまでやってこれたんだよ。これからは女も仕事をしたいと思ったら、男以上にがんばらないといけないんだよ」
といった。私はまだ朦朧《もうろう》としながら、兼高かおるさんのエキゾチックな彫りの深い顔を眺めつつ、
「かっこいい女の人だなあ」
と思った記憶がある。それから母親は朝寝坊している私を、放送時間になると布団からひきずり出してテレビの前に連れていき、
「一緒に観よう」
というのだった。それから二十年もたっているような気がするが、未だにこの番組が続いていて、兼高かおるさんのナレーションも昔のまま。ちらりと画面に登場する御本人の姿も全く変わらず、本当に驚いてしまった。毎日子供の世話に追われ、グウタラ亭主の尻を叩き、何の楽しみもない生活のなかで外国の街の様子や風俗がわかる「兼高かおる世界の旅」は、母親の唯一の楽しみであったのだろうし、世界をかけめぐる彼女の姿はあこがれだったのだと思う。それを思い出したら急に母親がふびんに思えてならず、知り合いの旅行雑誌の編集者に、母親がスイスに行くのだが、どういう所を観てきたらよいか、食物で気をつけることはないか、洋服はどんなものを準備していったらいいのかを尋ね、実家に電話して逐一教えてやったのである。そうしたら涙声で、
「おねえちゃん、ありがとう。行ってくるからね」
などといったりして、カワイイのである。ところが出発前日、再び電話がかかってきた。
「おねえちゃん。あたしが行く所、スイスじゃなくてスペインだった。同じスの字がつくから間違えちゃった。ハッハッハ」
私は頭が痛くなった。
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