私の友人で「キンツマ」命! というほどこのドラマが好きな主婦は、
「ストーリーは面白いんだけどさ、私にはいまいちリアリティに欠けるんだよね」
という。たしかにドラマでは法子が桐子の同僚の男性と仲良くなるのだが、彼女にいわせると、
「あんなこと、パーティも開けない家に起こるわけがないわ」
と怒る。そして、
「あんたはいいわねぇ。夫や子供のことなんか考えなくていいんだもん。桐子と同じ立場に、これからもいくらだってなれるじゃないの。好きなだけ恋愛ができるわよ」
とうらやましそうにいうのである。そういわれるとすぐその気になるのが私の悪い癖で、
「そうか。私は身軽だもんね。そうだわ、これからよね!! グフフフフ」
そして容貌まで、いしだあゆみになってしまったような気もしてくるから恐《こわ》い。それからというもの「キンツマ」を観ていても、桐子がいとおしくてならない。過去をひきずった不倫の恋も、なかなかいいわね、という気分になってきた。そこへ友人の、
「あなたも、桐子になれる」
ということばが脳下垂体に強く響くのである。ところが重要なことに気がついた。私にはひきずるべき過去など何もなかったのである。
「こんなことなら本ばかり読んでないで、二十代に過去の一つや二つ、作っておくんだった」
そう「キンツマ」を観て悔やむ私なのであった。
「ストーリーは面白いんだけどさ、私にはいまいちリアリティに欠けるんだよね」
という。たしかにドラマでは法子が桐子の同僚の男性と仲良くなるのだが、彼女にいわせると、
「あんなこと、パーティも開けない家に起こるわけがないわ」
と怒る。そして、
「あんたはいいわねぇ。夫や子供のことなんか考えなくていいんだもん。桐子と同じ立場に、これからもいくらだってなれるじゃないの。好きなだけ恋愛ができるわよ」
とうらやましそうにいうのである。そういわれるとすぐその気になるのが私の悪い癖で、
「そうか。私は身軽だもんね。そうだわ、これからよね!! グフフフフ」
そして容貌まで、いしだあゆみになってしまったような気もしてくるから恐《こわ》い。それからというもの「キンツマ」を観ていても、桐子がいとおしくてならない。過去をひきずった不倫の恋も、なかなかいいわね、という気分になってきた。そこへ友人の、
「あなたも、桐子になれる」
ということばが脳下垂体に強く響くのである。ところが重要なことに気がついた。私にはひきずるべき過去など何もなかったのである。
「こんなことなら本ばかり読んでないで、二十代に過去の一つや二つ、作っておくんだった」
そう「キンツマ」を観て悔やむ私なのであった。