ある雑誌の連載が終わったので、担当の編集者が私の欲しいものをプレゼントしてくれるという。
「シャネルの香水でも、エルメスのスカーフでも、何でもいいですよ。覚悟はできてますから」
となかなか潔い。それきいて私はシメた、と即座に、
「たけし猫まねき!!」
と元気に答えた。ところが彼は、
「何ですか、それ」
といって、たけし猫まねきの存在を知らないのである。あまりの激務のため、日曜日にテレビを観る暇もないので、どういう番組が巷《ちまた》に流されているのか全くといっていいほどわからないらしいのである。
「たけし猫まねきっていうのはまねき猫の顔のところが、ビートたけしの顔になってるの」
と教えてあげたらば、
「げーっ。そんな気持ちの悪いもの」
などと、とんでもないことをいう。
「かわいいじゃん」
「かわいくなんかないですよ。そんな不気味なもの、どこ行きゃあるんですか」
私は彼のために他にもトレーナーやらTシャツ、キーホルダーがあることも教えてあげた。
「きっと荒川区の熊野前商店街か浦安のフラワー商店街に行けば、あると思うの」