上海雑技団は、世界で唯一パンダの芸をみせるサーカスでも有名である。パンダというのは、反応がニブく、生きる意欲が少なくて、サーカスには向かないのに、調教師の若い男性が十二年間寝食を共にして芸をしこんだという。�パンダにおける生きる意欲�というのは、具体的に何を示すのかよくわからないが、このウェイウェイ君というパンダの姿をみていると、何となく生きる意欲はない、という雰囲気はあった。ウェイウェイ君と人気を二分しているマルチーズの七匹の親子の目つきには、「しっかりやらねば」という、犬なりの決意がみえていたが、ウェイウェイ君のほうは体型もあるのかもしれないが、「しかたないなあ。やってやるか。ドッコイショ」というかんじだった。パンダのぬいぐるみのなかに人間が入って、芸をしているかのようであった。テーブルの前に座ってきちんとお食事はするわ、シェパード二頭立ての車のうしろにふんぞりかえって、プップカプーとラッパを吹くわで、上野で邸宅ぐらしのパンダと同じ生物とは思えない。
またこの調教師のお兄さんが、十二年も寝食を共にしてきたのにもかかわらず、ニコニコ笑いながら「パンダは頭は大きいけど、中身は何も入ってない」などと大胆なことをいう始末である。私としては雑技団における、子供たちの過酷な訓練は垣間みえたが、ウェイウェイ君やマルチーズ一家に、どのようにあれだけの芸をしこむのか知りたかった。
雑技団の団員は美男美女ばかりで、そういう選《え》りすぐられた人々が空中ブランコをすると、なかなかなまめかしく胸がときめく。しかし華やかな笑顔の合間にふとみせる表情は厳しくて、どうも無邪気にパチパチと拍手はできない気分なのである。
またこの調教師のお兄さんが、十二年も寝食を共にしてきたのにもかかわらず、ニコニコ笑いながら「パンダは頭は大きいけど、中身は何も入ってない」などと大胆なことをいう始末である。私としては雑技団における、子供たちの過酷な訓練は垣間みえたが、ウェイウェイ君やマルチーズ一家に、どのようにあれだけの芸をしこむのか知りたかった。
雑技団の団員は美男美女ばかりで、そういう選《え》りすぐられた人々が空中ブランコをすると、なかなかなまめかしく胸がときめく。しかし華やかな笑顔の合間にふとみせる表情は厳しくて、どうも無邪気にパチパチと拍手はできない気分なのである。