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撫で肩ときどき怒り肩60

时间: 2020-02-09    进入日语论坛
核心提示:シッシッ、男は去れ! さっそく手ぬぐいを持って露天風呂に走っていった。が、ここは混浴である。事前に露天風呂内の偵察をして
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シッシッ、男は去れ!
 さっそく手ぬぐいを持って露天風呂に走っていった。が、ここは混浴である。事前に露天風呂内の偵察をしておいたほうがよかろう、とヒタヒタと忍者歩きをしながらそーっとついたてのフシ穴からのぞいてみた。誰もいない。脱衣所の壁には、「今は女性専用時間です」と書いてある。私はホッとして白濁した温泉の中につかった。頭の上には空が広がり、赤トンボがピュンピュンとんで、鳥の声もきこえてくる。そこへ突然「あのー、一緒に入ってもいいでしょうか」という声。ふりかえるとボサーッとした男が、こっちをのぞきこんでいる。「ダメ!」とどなっても、そいつは、「どうしてもダメですかあ」といいながら、すでに服を脱ぎはじめているではないか。
非常時に無防備なのは本当に困る。私は腹の中で「シッシッ、一緒に風呂に入る男は私が選ぶ!!」と叫びながら「地獄の黙示録」のマーロン・ブランドのように、首までつかって横目でギョロギョロするしかなかった。しかしそれを見つけた宿泊客のおばさんが、「出ていけったら出ていけ!!」と一喝してくれたおかげで、私の操は守られたのである。危機も去り、「極楽、極楽」と手足をのばしていたら、突然泳ぎたくなってしまった。
私が得意とするのは背泳であるが、露天風呂で背泳をするのは、いくら私でもはばかられる。ガッパガッパとバタフライをするのも異常である。やはりTPOを考えると、適切なのは平泳ぎであろうが、私は平泳ぎができないのである。しかし本能のおもむくままガバッとカエル足をしたとたん左ヒザに激痛が走り、目から火花がとび散った。一瞬わけがわからなくなり、ヒザをかばおうとしたら今度は右足がつってしまい、私は「ぐわっぐわっ」といいながらしこたま湯をのんでおぼれそうになってしまったのである。タイルや木造りのツルツルした風呂しか知らなかった私は、露天風呂が岩で造られているのも知らず、みごとにヒザを四センチも切ってしまった。しかしヒザでよかった。少し位置が違っていたらエライことになるところだった。しかし温泉はいいのだが、そこに行くまでがしんどい。最近は温泉ブームで、テレビでも番組が組まれたりしている。テレビ朝日のトゥナイトで毎週放送している「荒勢の名湯めぐり」もそのうちの一つである。私が久しぶりにチャンネルをまわした日は、マルコスとアキノの対決で、大騒ぎしていた時である。こういう世界が注目している事件がある時は、緊急に予定を変更して報道特別番組になることが多いから、「今日は名湯めぐりはないな」と思っていた。ところがフィリピン情勢に関するニュースを放送したあと、いつものように、フンドシ姿のがぶり寄りの荒勢が湯につかっていた。他局では、識者を呼んで今後のフィリピンはいかにと論じあっていたのに、荒勢は温泉旅館の美人|女将《おかみ》と仲良く入浴の真最中であった。以前新聞のテレビ欄で「重大事件があったのに、風呂に入っている姿を放送している」とこの番組を批判している投稿を読んだことがあったが、他局とのバランスは明らかにくずれるが、取材のために重い機材をかついで山道、川道を歩いたであろう苦労を考えると、「能天気に風呂に入っていても、いいじゃないか」と、思ったのであった。
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