ところが今の小学校の給食はなかなかメニューが充実しているらしい。あの脱脂粉乳を飲まされないだけでも幸せだ。五月二十九日、フジテレビ「美味《おい》しんぼ倶楽部《くらぶ》」では、昭和三十年代の給食を、小学校五年生に食べさせていた。
そのメニューというのが脱脂粉乳、コッペパン、それに給食の帝王ともいうべき鯨のたつた揚げ。私たちのころは、給食において唯一の固形肉だった鯨も、鶏や牛や豚を食べ慣れている子供たちには、生まれて初めて口に入れるもののようであった。「固いけど、おいしい」といいながらムシャムシャ食べている男の子や、マジメな顔をしてただ黙々と食べている女の子。コッペパンも固いと不評だったが、レポーターの話によると、「こういった固いもののほうが、アゴのためによいのだ」と蘊蓄《うんちく》を傾ける子もいたらしくてなかなか賢い。そして、メーン・エベントの脱脂粉乳。おそるおそる口をつけた女の子の顔がアップになる。そして口に入れたとたんに、キッと眉間にシワが寄り、カップを置いてひとこと「マズイ!」。ところがどの時代でも同じような子供がいるもので、一人の男の子は、ぐいーっと息もつがずに脱脂粉乳のイッキ飲み。そして上くちびるにミルクをくっつけたまんま、「あー、おいしかった」といってニカッと笑った。そしてその顔が、かつて同じクラスにいた、脱脂粉乳が大好きで、みんなの分をもらって喜んでいた男の子とソックリだったのでビックリした。短髪で剛毛、目は一重でやや上がり目、そして前歯が大きくて団子鼻の男の子は、先天的に脱脂粉乳が好きなのかしらと不思議な気分になったのである。
そのメニューというのが脱脂粉乳、コッペパン、それに給食の帝王ともいうべき鯨のたつた揚げ。私たちのころは、給食において唯一の固形肉だった鯨も、鶏や牛や豚を食べ慣れている子供たちには、生まれて初めて口に入れるもののようであった。「固いけど、おいしい」といいながらムシャムシャ食べている男の子や、マジメな顔をしてただ黙々と食べている女の子。コッペパンも固いと不評だったが、レポーターの話によると、「こういった固いもののほうが、アゴのためによいのだ」と蘊蓄《うんちく》を傾ける子もいたらしくてなかなか賢い。そして、メーン・エベントの脱脂粉乳。おそるおそる口をつけた女の子の顔がアップになる。そして口に入れたとたんに、キッと眉間にシワが寄り、カップを置いてひとこと「マズイ!」。ところがどの時代でも同じような子供がいるもので、一人の男の子は、ぐいーっと息もつがずに脱脂粉乳のイッキ飲み。そして上くちびるにミルクをくっつけたまんま、「あー、おいしかった」といってニカッと笑った。そしてその顔が、かつて同じクラスにいた、脱脂粉乳が大好きで、みんなの分をもらって喜んでいた男の子とソックリだったのでビックリした。短髪で剛毛、目は一重でやや上がり目、そして前歯が大きくて団子鼻の男の子は、先天的に脱脂粉乳が好きなのかしらと不思議な気分になったのである。