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撫で肩ときどき怒り肩84

时间: 2020-02-09    进入日语论坛
核心提示:直立不動の人 実は高校時代に野球部のマネージャーになろうと志願したことがある。たった一度しかない青春を、ナインと一緒に笑
(单词翻译:双击或拖选)
直立不動の人
 実は高校時代に野球部のマネージャーになろうと志願したことがある。たった一度しかない青春を、ナインと一緒に笑ったり泣いたりして、謳歌《おうか》したかったから、というのはウソで、手っ取り早く彼氏をみつけるには、男の集団のなかに身を置くこと。それには野球部の女子マネージャーになるのがいちばん、とふんだからである。
放課後、校庭の隅で練習している野球部のところにいった。そこには、直立不動でじっとしている三年生の女子マネージャーの姿があった。
うちの高校の野球部は、あってないも同然のクラスで、ただ野球が好きな男の子が、楽しんで球を打ったり投げたりという程度のものだった。女の子にも全然人気がなくて、その三年生のマネージャーが卒業してしまうと、あとをつぐ女の子はいなくなってしまうのである。そこへ私が、しゃしゃり出ようとしたのであった。
「あの、マネージャーをやりたいんですけど」と、おそるおそる彼女にいってみた。
「あら、そうですか」。彼女は落ち着いた声でいった。高校生とは思えない、おばさんっぽい雰囲気の人であった。そして、直立不動の姿勢のまま、女子マネージャーの仕事とはなにかを説明した。必ず練習には顔をだし、スコアブックをつけること。練習が終わったらユニフォームの洗濯をすること。部費の管理をすること。そのほか、山のように「しなければならないこと」を聞いたが忘れてしまった。これだけのことをやって、彼氏をつかまえるヒマなんかあるかしら、と心配になった。
彼女は、額に汗していつまでも立ちつくしていた。「椅子に座らないんですか」ときいたらば、「彼らがあれだけ一生懸命練習をしているのに、座れるわけないでしょう。終わるまで、じっと待っているのが、マネージャーの務めです」と、ものすごい顔でにらまれてしまった。
ともかく私は、マネージャーに志願したわけだから、その日は彼女にくっついて、具体的に仕事がどういうものか見学させてもらった。練習が終わると彼らは、汗とホコリと砂にまみれた、ばばっちいユニフォームを団子状にまるめて、カゴの中にほうりこんだ。全部で十四人分あった。それを、彼女は、嬉々として洗濯している。「どうして、女子マネージャーが、洗濯しなくちゃいけないんですかぁ」ときくと、「こういうことは昔から決まっているのです」と、彼女はおごそかに答えるのだった。
私は寝る前、布団の上にアグラをかいて、女子マネージャーをやるか否か真剣に悩んだ。
「直立不動の姿勢のままでじっと耐え、山のような洗濯をしたあげくに男がついてくる可能性」と「家に帰って好きなことをやって、彼氏ができるのは、なりゆきにまかせる」のと、どっちにしようか考えあぐねたが、やっぱりマネージャーは、私の性格に合わないと判断し、この際「男」はあきらめることにしたのである。次の日、その旨伝えても、彼女は「そうですか」と、静かにいっただけだった。
その後、校内文集で彼女が書いた「美しい黄昏《たそがれ》」という題の詩を読んで、私は納得した。それは、「あなたがたが、汗を流して白球を追っている、若者らしい姿は何ものにもかえがたい」と、ロマンチックに賛美している。こういう人でないと、やはりマネージャーは務まらない。
私は彼らのためにも、自分のためにも、マネージャーをやらなくて本当によかった、と心から思ったのである。
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