私が最近気にいっている番組に、テレビ東京の土曜日、深夜零時十五分から放送されている「日本映画名作劇場」がある。この番組は、私が生まれる前の邦画を観せてくれることが多いので、いろいろな発見があって誠に面白い。邦画に詳しい人だと、「あの大事なシーンをカットしている」とか「こんな映画は名作ではない」と、文句も出るのだろうが、そういうことは、私にとっては関係ないのである。
八月二十三日に放送された「安城家の舞踏会」で、生まれて初めて、動く「原節子」を観た。「そうか、この人が永遠の処女か……」と、私は布団の上にひっくりかえって、画面を凝視していた。安城家という華族の没落をテーマにしたストーリーで、もと運転手で、今は事業に成功している男(神田隆)に家を買われることになって、落胆する父親(滝沢修)や出戻りの姉(逢初夢子)を励まして、明るく健気に生きる末っ子が、原節子である。華族としての最後の記念の舞踏会を開き、そこに父親のお妾《めかけ》さんまで呼んであげるという優しい乙女なのである。当時、彼女は何歳だか知らないが、気品があって役柄にはピッタリだった。そして早口で喋りまくる今風のセリフとは違い、あまりにゆっくり、のんびり、はっきり話しているのには、時代の差を感じてしまった。