私はNHKの「婦人百科」を必ず観ているのだが、ここでは編み物はもちろん、ビーズ刺繍《ししゆう》、着物から洋服を作る、刺し子、紙をすいてハガキを作る、など、私が手を出したくなるものばかり放送する。なかには、ちょっと趣味が今一つだなと思うものもあるが、やっぱり人が、手で物を作っているところを見るのは楽しい。そして一番困るのは、順を追ってだんだん形に仕上がっていくのを見ると、いてもたってもいられず、材料を買ってきて家のなかでしこしこ製作に励んでしまうことである。「男をあさらないと、いてもたってもいられない、などということにくらべて、何て罪がないのだろう」と自分を納得させつつ、次から次へと買い込む。そして不思議なことに、こういうときは、コロッと本のことは忘れているのである。それで、きちんと最後までやればいいのに、生まれつき熱しやすくさめやすい性格なため、すぐ飽きて途中で放り投げる。そして、また番組をみては、さらし木綿とか、ガラスビーズを買ってきてまた飽きる。その繰りかえしである。うちの押し入れには、何の形にもならず、中途半端にピラピラしたものが山をなしている。その存在を忘れていたのに、大掃除をしたために、見たくないものを見るハメになった。いま私は、頭しか作ってない人形とか、ちゃんちゃんこみたいになっているブラウス、カボチャみたいになってしまったビーズ刺繍のバッグを前にして、頭を抱えているのである。
男あさりよりは……