最近のコマーシャルを見ていると、特にストレスに効くことを売り物にしている薬が多いような気がする。神出鬼没の松本幸四郎が、「ストレスと胃の粘膜の関係について、ご説明いたします」といって、みんなにうるさがられているものなど、関係ない人間は、ハハハと笑ってみていられるが、ストレスを抱えている人にとっては、とてもじゃないけど笑ってすませられる問題ではないだろう。
私も勤めているころ、どうも胃が重苦しくて、体の調子が悪かった。医者に行っても内臓にはどこにも異常がないという。となれば、これはあのストレスというやつだな、と思っていた。何とかしてこの厄介な状態から抜け出たいと思って、ストレスとは何かを書いてある本を読んでみたら、自分はストレスがたまっていると思っているからよけい症状がひどくなると書いてあった。考えてみれば、調子が悪いとき、「またストレスがたまっている」などと考えると、余計、気が滅入ったのは事実である。私はそれを読んで、ストレスがたまったと思わなければいい、と悟ったら、気分が良くなった。そしてそれ以来、少々調子が悪くても、「私の体にストレスなどありえない」と、強気に生きているので、食べすぎたとき以外、胃が重苦しくなったりすることはなくなった。私は、今はわがまま放題いっているから、ストレスがたまるほうがおかしいが、自分と他人との関係を、いつも考えていかなければいけない立場の人は、さぞや大変だろうと思う。
たまたま、テレビ朝日の「こんにちは2時」を観ていたら、「ストレス解消法」をテーマに、ジャーナリストの生江有二氏がレポーターをしていた。環境ビデオなどを見せて、精神を安定させるバイオフィードバック療法。二、三年前から話題になっていた、母親の胎内にいるかのごとき気分になれるというフロートカプセル。四十分間このなかにはいって、ポカーッと浮かんでいると、ほとんどの人は気持ちが良くなって眠ってしまうそうである。画面に登場した利用客は、姉妹くらいにしかみえない、嫁と姑の二人連れだった。嫁と姑がストレスを発散させるために、スッポンポンでカプセルのなかに入り、両者共、無心でポカーッと浮かんでいる図を想像すると、滑稽《こつけい》な気もしたが、腹のなかでいつまでも根に持って、おたがいいがみ合っているより、ポカーッと浮いて気分がスカッとすれば、それにこしたことはない。