それから私たちは、手分けして必死で衣裳を作った。足元は厚ぼったい黒のタイツと地下|足袋《たび》。羽はセロファンをしわしわにしたもの。男の子がどこからか拾ってきた大きなプラスチックのザルに、足を出すための穴を開けて、それをもとに演劇部員の美術担当者がハエの本体を作った。黒の長袖のTシャツを着用し、頭には黒く塗ったザルをかぶってもらうことにした。ザルには針金で、ぴよーんとつっぱった立派な触角がつけてあった。ハエにこんな立派な触角はないんじゃないかと批判も出たが、これも景気づけということで一件落着し、ハエの衣裳は全て出来上がった。
当日、仮装行列はプラカードと共に、校庭を一周することになっていた。ハエの装束を着た「ハエ」は、ハエというよりも歳をとってしょぼくれた「みつばちハッチ」みたいだった。
「ハエ」は見るからにふてくされて歩いていたが、全校のみなさまには圧倒的に受けた。特に校長はテントのなかから身を乗りだし、「ハエ」がハエの格好をしているのがわかると、教育者とは思えないはしゃぎぶりで、しまいには笑いながら椅子から転げ落ちた。
「ハエ」は、「ハエ」とでかでかと書かれた、クラス委員長が掲げるプラカードを背に、苦り切った顔でトボトボ歩いていた。全校生徒及び教職員一同の拍手|喝采《かつさい》を浴びたのにもかかわらず、「ハエ」は校庭を一周歩き終わると、かぶっていたザルを憤然とかなぐり捨てて、家に帰ってしまった。
私たちは「ハエ」の行動に少しびっくりしたが、面白かったんだからいいや、とみんなで明るく笑ってすませてしまった。しかしこの映画を見て、今になって「やっぱりハエの格好などさせるべきではなかった。先生にすまないことをした」と、ちょっぴり反省したのであった。
当日、仮装行列はプラカードと共に、校庭を一周することになっていた。ハエの装束を着た「ハエ」は、ハエというよりも歳をとってしょぼくれた「みつばちハッチ」みたいだった。
「ハエ」は見るからにふてくされて歩いていたが、全校のみなさまには圧倒的に受けた。特に校長はテントのなかから身を乗りだし、「ハエ」がハエの格好をしているのがわかると、教育者とは思えないはしゃぎぶりで、しまいには笑いながら椅子から転げ落ちた。
「ハエ」は、「ハエ」とでかでかと書かれた、クラス委員長が掲げるプラカードを背に、苦り切った顔でトボトボ歩いていた。全校生徒及び教職員一同の拍手|喝采《かつさい》を浴びたのにもかかわらず、「ハエ」は校庭を一周歩き終わると、かぶっていたザルを憤然とかなぐり捨てて、家に帰ってしまった。
私たちは「ハエ」の行動に少しびっくりしたが、面白かったんだからいいや、とみんなで明るく笑ってすませてしまった。しかしこの映画を見て、今になって「やっぱりハエの格好などさせるべきではなかった。先生にすまないことをした」と、ちょっぴり反省したのであった。