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撫で肩ときどき怒り肩118

时间: 2020-02-13    进入日语论坛
核心提示:「ほとんどビョーキ」に笑えなくなった私うちの家族は元気がいいのだけが取り柄である。ところが二カ月ほど前から弟の体の調子が
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「ほとんどビョーキ」に笑えなくなった私

うちの家族は元気がいいのだけが取り柄である。ところが二カ月ほど前から弟の体の調子が悪く、町医者にかかってもいっこうに良くならない。で、我が家で初めての、緊急入院および精密検査が行なわれることになってしまった。
母親は心配しながらも、自分も出産で入院した経験があるから冷静だったが、「ガーン」ときたのはこの私である。入院するという電話をもらってから、食事が喉《のど》を通らなくなった。毎日、三度の食事をしっかり腹一杯食べる私がである。いままで病院と関係ない生活を送ってきたので、異常なくらい病院が怖い。入院したら生きては帰れないんじゃないかと怯えてしまうのである。
弟は無事に帰ってこられるだろうかと考え始めたら、これがろくなことにならない。子供の頃のことを突然思い出して、「あの可愛かった弟が、何でこんな目にあわなきゃならないんだろうか」と涙がじわっと出てきたりする。友だちに電話をしたら「大変ね」といいながらも「鬼の目にも涙」とからかわれるし、この一カ月はどういう結果が出るか心配で、ボーッとして過ごしてしまった。
気分転換をしようとテレビのスイッチを入れても、どうも心の底から楽しめない。だいたい今まで気にならなかったものがいちいちグサッとくる。芸能ニュースでは美空ひばり、平幹二朗の入院。浅香光代のご主人の急逝が報じられ、CMでは「今が墓地、霊園獲得の最後のチャンスです」といって、懸命に地べたを売ろうとしている。それを見ると、「ああ、入院、急逝、墓地、霊園。まさか弟が」と一気に気分が落ち込んでくるのだ。
お笑い番組では、元気のいい芸人さんたちが観客にむかって「こいつらは、ほとんどビョーキです」などといっている。そのとき私も一緒に「ハハハ」と笑っているのだが、口で笑っても目までは笑えない。「ビョーキ。ああ、弟はいったい何の病気なんだろう」とまた暗くなってしまうのである。笑いをとるために「てめえら死ね」といっているのを見ると、「軽々しくそういうことばを吐くな」と本当に腹が立ってくることもあった。
今までは自分のまわりに病人がいなかったから軽く聞き流せたものでも、こういうことになって気にするまいと思っても、目や耳から入ってくるとやっぱりムカッとする。だいたいこういう発言が多いのは若い子向きの番組だから、彼らがそういわれても傷つかないだろうし、私もかつてはそうだった。やはり自分がそういう立場になってみないとわからないものだ。
弟は体中|隈《くま》なく検査をしてもらった結果、単なる過労とわかった。今月中に退院できることになり、私の食欲も回復した。うちの場合は大したことがなかったけれど、病院に入っている人はたくさんいる。動くこともままならず、テレビを楽しみにしている人もたくさんいるはずである。はたしてそういう人たちに対して、今のテレビは明るく笑えるような内容なのだろうか、と身内に病人が出て初めてそう思ったのであった。
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