ペテルブルグへ行く
キンダーソヴォ村の男たちが馬そりに乗って、出かけていった。組を作ってペテルブルグへ出かけていった。冬のペテルブルグへ出稼ぎに。まる一日いったところで、ある村に泊まることになり、橋の上で話しあった。
「馬そりの轅(ながえ)をペテルブルグのほうへ向けておかなくっちゃな。あした、逆もどりして、家へ帰ってしまったりしないように」
ひとりがそういうと、「そいつはいい」ってことになった。そんなやりとりをひとりの男が聞いていた。脇で聞いていたのさ。みんなが寝たのをみとどけて、その男はそりの向きをさかさにした。キンダーソヴォ村のほうに向けておいたのさ。
さて、次の朝、馬をそりにつけると、ペテルプルグへ出発だ。ペテルブルグへと馬を走らせた。どれだけ行ったころか、ひとりの男が、
「おや、あれはおらたちの村の橋のようだ」
というと、だれかがいった。
「橋なんて、どれもこれも似たりよったりさ」
するとこんどはもうひとりの男がいった。
「あそこにあるのはどうもおらの家のようだ。とすると、これはおらたちの村ってことだ」
「村なんて、どこも似たようなもんさ。広い世間には村なんていっぱいあるんだから」
「おや、あそこにいるのはうちのかみさんのようだ。川でせんたくしてるわい」
「かみさんなんて、どこのうちのも似たようなもんさ」
それをおかみさんたちが聞きつけた。
「おまえさんたちときたら、なんてとんまなんだろう。うちへひきかえしてくるなんて!」
そんなわけで、男たちは家へ帰ってきてしまい、その先どっちを向いて進めばいいやら、わからなかった。道はとだえ、話はおしまい。
(斎藤)
「馬そりの轅(ながえ)をペテルブルグのほうへ向けておかなくっちゃな。あした、逆もどりして、家へ帰ってしまったりしないように」
ひとりがそういうと、「そいつはいい」ってことになった。そんなやりとりをひとりの男が聞いていた。脇で聞いていたのさ。みんなが寝たのをみとどけて、その男はそりの向きをさかさにした。キンダーソヴォ村のほうに向けておいたのさ。
さて、次の朝、馬をそりにつけると、ペテルプルグへ出発だ。ペテルブルグへと馬を走らせた。どれだけ行ったころか、ひとりの男が、
「おや、あれはおらたちの村の橋のようだ」
というと、だれかがいった。
「橋なんて、どれもこれも似たりよったりさ」
するとこんどはもうひとりの男がいった。
「あそこにあるのはどうもおらの家のようだ。とすると、これはおらたちの村ってことだ」
「村なんて、どこも似たようなもんさ。広い世間には村なんていっぱいあるんだから」
「おや、あそこにいるのはうちのかみさんのようだ。川でせんたくしてるわい」
「かみさんなんて、どこのうちのも似たようなもんさ」
それをおかみさんたちが聞きつけた。
「おまえさんたちときたら、なんてとんまなんだろう。うちへひきかえしてくるなんて!」
そんなわけで、男たちは家へ帰ってきてしまい、その先どっちを向いて進めばいいやら、わからなかった。道はとだえ、話はおしまい。
(斎藤)