民俗学者として活動をはじめたばかりのカールレ・クローンが北フィンランドのヒュルンサルミ村で、一八八二年に記録した話です。クローンは、昔話の歴史地理学的研究法を生み出した人で、わが国でも「フィンランド学派」の研究者として知られています。語り手は、アート・ケンッパイネンという当時七〇歳の男性です。
この話は一般に「尻尾の釣り」と呼ばれて、国際的に広く分布しています。水に入れた尻尾が凍りついてしまう「凍結型」と、尻尾に籠をくくりつけ水中をひかせる「籠ひき型」の二つの型があります。クローンは「凍結型」の方を古いと考えて、この型がまず北欧に生まれ、世界中に伝えられていったと推測しました。日本でも「凍結型」の話が各地に多く語り継がれていますが、きつねとかわうその葛藤譚になっていることが多いようです。