ヴォロネシ生れの有名な語り手アンナ・H・コロリコーワ(一八九三年生)の語った話です。アンナの祖父は六歳で孤児となり、盲目の宗教詩歌いの手引き(案内役)となって各地をまわりながら歌を覚えました。祖母もすぐれた歌い手で、この二人からアンナは多くの話と歌を受け継いだといいます。
若いうちから婚礼などに呼ばれて歌ったり語ったりしたアンナは、やがて語り手として人々に知られるようになりました。子供の頃から働きづめだったアンナの語りには、社会の不正にたいする風刺や怒りがこめられているように思われます。この話の語りはじめや結末にも、その思いが表れています。