●地下ぐらの娘(AT813A「カンテレ姫」)
一九六三年に白海沿岸のレスノイという村で六八歳のアウドチャ・アニシモヴナ・モシニコワが語った話です。かつてこの地の人々は、森や川、家や風呂小屋、穀物乾燥小屋や地下ぐらなどにおそろしい霊がいると信じて、恐れ、敬ってきました。そして、うっかり「悪魔にさらわれてしまえ」といった悪い言葉や呪いを口にすると、そのとおりになってしまうと信じていたのです。たいがいの昔話の場合は、さらわれた娘が何かのきっかけで人間の男性と結婚して、闇の世界から救われることになるのですが、ここにあげた話では、人間の世界へ戻ることができず、実話のように語られています。話の中の婿も不注意な言葉によってさらわれてきた若者と想像されます。