ウクライナの話で、ルーマニア国境に近いザカルパチアのヴォニコヴォ村で記録されました。この地方では、火種はとても大切にされてきました。むかしは、「火をわけることは富をわけること」「火種を貸すならすみやかに返してもらうこと」ともいわれ、「一年の特定の日には、火をわけてやらない」という習慣もありました。
焚き火を囲む十二の月が援助者として登場し、逆境にある者を助けるのは「娘と十二の月」を思わせますが、炭が金にかわるのがこの話の特徴です。炭が金にかわるモチーフは、ロシアにも多くみられます。ウクライナには十二の月をあらわす十二人の男たちが祭りの服装をしている例もあり、日本の「大歳の火」を思わせる話もあります。