二話ともA・トゥピーツィナが一九六四年にカレリアのプリャージャ地方で採録した話です。語り手は前者が六六歳の男性M・A・イワーノフ、後者が二八歳の男性N・P・フィラートフです。
カレリアはソ連の北西、フィンランドと国境を接するあたりをいい、言語はフィン語と同系です。
キンダーソヴォ村は南カレリアに実在する村で、「愚か村」として近郷にその名を知られています。川と湖の多いカレリアは交通の便が悪く、とくに春の雪どけのころは馬車も船も通わず、村は孤立してしまいます。ここに紹介した二話の他にも、キンダーソヴォ村の人たちが何をするにも十二露里(約十三キロメートル)先の隣村のプリャージャまででかけていって、隣村の人たちがやっていることを見てきてはまねをし、失敗するこっけいな話が数多く記録されています。