バルト海沿岸のメクレンブルク州にすむ一八九二年生まれのベルタ・ぺータースが語った話です。ベルタは、ヴァリンの町の教会堂に住む牧師夫妻の三番目の子として生まれ、幼い頃から昔話を聞いて育ちました。ことに母方の祖母は貧しい仕立屋の生まれでしたが、ベルタの母や孫のベルタにたくさんの話を残しました。しかし、ベルタの話には、母の話してくれたグリム童話の影響も見られます。ベルタ自身も認めるとおり、祖母から聞いた話はグリム童話によってより鮮明なイメージを与えられたようです。
イギリスでは「トム・ティット・トット」として知られた話ですが、ヨーロッパ各地で大変人気のある話です。伝説として「実在の教会やドームを建立する際、巨人や小人、悪魔、トロルなどに助けてもらった」という話も多く、そこにも超自然的な援助者の名を当てるモチーフが登場します。日本の「大工と鬼六」もこのタイプの話です。
なお、原話には小人が一人で歌い踊るところが楽譜つきで採録されています。