この話を語ったハインリヒ・ボンラートは、一八五五年にボンからそう遠くないジーク地方に生まれました。ボンラートは、この話を収めたディトマイヤー編『ジーク山麓の伝説と笑話』の中でも傑出した語り手です。ある日ボンラートは、ディトマイヤーが居酒屋で主人と村のよもやま話をしているのに興味をもち、「自分にも話させてくれ」といって村の伝説などを語ったあと、「昔話には興味がないのかね」といってこの話を語ってくれたそうです。ボンラートは遍歴大工の仕事をしていた関係で、この近郊の村々を歩き回り、仕事先でたくさんの話を仕入れたようです。
グリム童話でよく知られた「勇敢な仕立屋」と「世界を旅する六人組」の結合した形になっていますが、話のなかに編者と話者のやりとりも入った、たいへん忠実な記録です。