フランスのすぐれた民族学者ジュヌヴィエーヴ・マシニョンが、一九五一年の五月にヴァンデ地方のフォントネイにあるヴリュイールのルネ・シェーニュ夫人から聞いた話です。シェーニュ夫人は、この話をお母さんから聞いたのだそうです。
ペローの『童話集』でよく知られた「青ひげ」の類話ですが、再話の名人だったペローには見られないいくつかの面白い特徴をもっています。たとえば、主人公の娘がピンチに陥ったとき、それを兄たちに知らせに走る小犬とか、青ひげと娘とジャックじいさんの間に交わされる問答の三度の繰り返しとかは、昔話の大切なきまりです。死を宣告された娘が花嫁衣裳をつけることも、この話に奥行を与えているように思われます。
青ひげは、フランスでは、よくジル・ド・レと言う実在の人物の伝説と重ね合わせて考えられていますが、これは伝説と昔話が結びついた興味深い例の一つです。