ガスコーニュ地方で一九〇八年に、アントナン・ペルボスクがマチルド・エイブラール夫人から聞いた話です。ペルボスクは、ラングドックの詩人です。フランス南西部モントーバン近郊の小さな村で小学校の先生をしながら、たくさんの昔話を記録しました。
この話に登場するドラックというのは、時には馬、羊、猫などにも姿を変えて現れる超自然の生きもので、人食いをさすこともあり、ガスコーニュの話によく登場します。
「すりかえられた婚約者(または花嫁)」のエピソードは、ずいぶん古くからの文献にもみられます。フランス中世の文学では、シャルルマーニュ王の母と伝えられる「大足のベルト」の物語が有名ですが、さらに古くは、インドの説話集『カター・サリット・サーガラ』にも入っています。