昔話では援助者の贈り物は三つというのが普通です。「うかれヴァイオリン」でも、他の多くの話では三つ目に「だれもが自分のいうことをきく力」を贈られたり、「死後天国に行ける」ようにしてもらうことになっていますが、この話には三つ目がありません。
しかしこの三つ目の贈り物は、一つ目の「かならず当たる鉄砲」や、二つ目の「みんな踊り出すヴァイオリン」という贈り物と違って、話の筋にそれほど影響を与えるとは思えません。このように筋に影響を与えないモチーフが語り手に忘れられることは十分考えられることです。この話の面白さはあくまでも二つめの贈り物であるヴァイオリンの力にあるのです。
この話は一八七九年にイザイア・ヴィゼンティーニによって、北イタリアのマントヴァで集められた『マントヴァの昔話』に収められています。