カラスとフクロウ
むかし、カラスとフクロウがひとつの家にいっしょに住んでいた。けんかもせず、仲よく暮らし、獲物もいつもふたりで分けあって食べていた。カラスもフクロウも女で、そのころはふたりともまだ体じゅうまっ白だった。
こうしてふたりはいっしょに暮らし、年をとっていった。あるときのこと、フクロウがカラスにこういった。
「わたしたち、年をとって死んでいくんだけど、このままでは子どもも孫もわたしたちに似て、まっ白いのばかりできるわね」
そんなわけでフクロウはカラスにたのんで羽をきれいに染めてもらうことにした。カラスもそれはいいというので、じぶんの尾羽を一本抜いて、明り皿の古い油をつけてフクロウの羽に塗りはじめた。フクロウは身じろぎひとつしないで、じっとしていた。まる一日フクロウの羽を染めていたカラスはすっかり染めおわると、
「あんたがかわいたらすぐに、こんどはわたしの羽を染めてちょうだい」
といった。
フクロウはうなずいて、じぶんの羽がかわくと、カラスにいった。
「さあ、こんどはわたしがあんたを染めてあげるわ。いいこと、目をつむって、じっとしてるのよ。動かないでね」
カラスは目をつむってじっとしていた。するとフクロウは明り皿の油をとってカラスの体にたらたらっとかけて、体じゅうまっ黒にしてしまった。
カラスはかんかんになっておこった。
「なんてひどいことをするの。わたしはあんなにせっせとあんたの羽を染めてやったじゃないの。見てよ、あんたひとり、こんなにきれいになって。このうらみはけっして忘れないわ。孫の代、ひ孫の代になっても、わたしたちカラスはあんたを許さない。こんなにまっ黒にされちゃって、人目につくったらありゃあしない。わたしとあんたとはこんりんざいあかの他人、敵と味方よ」
このときからさ。カラスの羽がまっ黒になり、フクロウの羽にきれいな模様ができたのは。