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世界昔ばなし102

时间: 2020-02-18    进入日语论坛
核心提示:シャチの国へいった男 ナパクタクの男がカヤックに乗って崖のあたりに漁に出たときのことだ。なん艘(そう)かのバイダーラがし
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 シャチの国へいった男                                                                

ナパクタクの男がカヤックに乗って崖のあたりに漁に出たときのことだ。なん艘(そう)かのバイダーラがしとめた鯨をひいていくのを見た。男はバイダーラに近寄って、バイダーラの人たちの目につくようにしたが、すぐそばまでいってもだれも気づかないのさ。
「このバイダーラは鯨をひいて、いったいどこの岸に着くんだろう。あとをつけてみよう」
男はそう思って鯨打ちたちのあとからカヤックをこいでいった。岸に着いたが、そこはまったく知らない村で、見おぼえのない土地だった。岸にあがって、カヤックを引きあげたところへ、何人かの人たちが岸におりてきた。一度も見たことのない人たちだった。その人たちが鯨をさばきはじめたので、男はそれをじっとながめていた。ところがこの男がみんなの間をあるきまわったり、肘でこづいたりしても、だれも気づかないのさ。
そのとき、子どもをつれた女が亭主の名を呼んで、
「この子に鯨の皮を切ってやって」
といった。
亭主がいちばんうまそうなところを切って、女の足もとに投げてやった。男は女がそれを拾うまえにそばにいって、鯨の皮を足でけとばした。
食べ物が消えてしまったので、女はあたりをさがしまわったが、それがどこにもないんだ。男は女が背を向けたすきに鯨の皮の切れっぱしをさっとつかんで、女の背にはりつけた。すると、なんとふしぎなことに、鯨の皮がすっと消えて、女の皮膚の中にはいってしまったじゃないか。女はさけび声をあげて、背中がちくちく痛いといってさわぎだした。すると亭主がかけてきて女をそりに乗せて、家にひいて帰った。
男はそのあとをつけていくうち、別の女が鯨の脂身を積んだ荷ぞりをひいていくのに追いついた。男は近寄って、ひょいと荷ぞりにとび乗った。女は立ち往生してしまい、先に進めなくなってしまった。女はつっ立って、
「どうして荷が急にこんなに重くなったのかしら。きっとくたびれて力が出ないんだわ」と思って、一休みすることにした。姿の見えない男はそりからおりると、そこから先はあるいていった。家が立ち並んでいるところへやってくると、男は一軒の家にはいっていった。この家では女が肉を煮ていた。女のよこにはたったいま煮たばかりの肉が皿にのっていた。
「ねえ、その肉をおれにくれ。腹ぺこなんだ」
と男がいうと、女は振り返ったが、だれもいやしない。
「おや、耳鳴りがするわ。そら耳かしら。肉をほしいってだれかがいったのに、だれもいないわ」
と女がさけんだ。
「今度はもっとびっくりさせてやるぞ」
男はそういって皿の肉をつかむと、じぶんの口にほうりこんだ。女は肉の切れ端が皿から飛び出して、宙に消えてしまったのを見て、
「おや、また耳の中で人の声がしたわ。煮た肉がどこかへ消えてしまった。なんてことなの。きっとわたし、死ぬんだわ」
こうして男は煮た肉をみんなよこ取りし、土小屋を出て肉をたいらげてしまうと、もう一軒の土小屋へいった。そして土小屋の敷居のはしに座りこんだ。そこへ娘がふたり、岸から鯨の肉を運んで、こっちへやってきた。そばまできて、敷居をまたいで中にはいろうとしたが、どうしたことだ。入り口は広いのに、中にはいれないじゃないか。
「どうしてうちの入り口は急にせまくなってしまったのかしら」
と娘たちがいった。
こんなふうに男はあちこちあるきまわって、みんなのじゃまをしてあるいたが、だれもこの男に気づかなかった。姿が見えないんだよ。そこでこんどは病気になった女の家にいって、聞き耳をたてると、女がうんうん、うなっているのがきこえた。シャーマンにも、呪術師にも手のほどこしようがなかった。土小屋の中でだれかが、
「あの男を呼んでこい。病気をなおしてくれさえすれば、望みのものはなんでもやるといってくれ」
といった。
土小屋の前に立っている男のそばを使いの男が通りかかったが、なんにもいわなかった。姿が見えなかったのさ。それからしばらくして、下着一枚しか着ていない男が土小屋にやってきた。この家の主人が呼びにやった男だ。この男は姿の見えない男のそばにくると、こういった。
「おまえは何者だ。どこからきたんだ。どうして土小屋にはいらないんだ」
「わたしは鯨打ちたちが鯨をひっぱっていくあとをつけてカヤックをこぐうち、ここへきてしまいました。わたしはナパクタクの者です。ここがいったいどこなのか、わたしにはわかりません。みんながわたしに気づいてくれるように、あれこれやってみましたが、だめでした。わたしの姿はだれにも見えないのです。見えたのはあなただけです。脂身の付いた、鯨の皮をあの女の背中にはりつけたのもわたしです。あの人の背中が痛むのはそのためです」
それをきいた男は、
「おれのあとについて、土小屋の中にはいれ」
といった。
ふたりが中にはいると、カヤックに乗ってよその土地からきたこの男の姿が、今度はその場にいる人みんなに見えた。呼ばれてやってきた男がこういった。
「カヤックに乗ってやってきたこの男は病気をなおすことができる。おまえがこの男をナパクタクまで送りとどけてやればの話だが」
すると、わずらっている女の亭主がいった。
「おれの女房の病気をなおしてくれさえすれば、もちろん、送りとどけてやるとも。女房があんなに苦しんでいるんだ」
鯨をしとめた男がこの土小屋の主(あるじ)だった。鯨の皮を背中にはられた女がその女房というわけだ。男は病気の女のそばにいって、女の皮膚の下から鯨の皮の切れ端を取り出すと、明り皿の前に置いた。すると女がふうっとひとつ、大きな息をした。この家の主が見ると、昼間じぶんが子どものために切ってやった鯨の皮がそこにあった。
次の日の朝、この家の主は舟乗りたちを呼び集めて、バイダーラに鯨の皮を積むようにいいつけた。バイダーラに荷を積んで海に出し、バイダーラにカヤックをしばりつけた。そして男にみんなといっしょにバイダーラに乗るようにいった。それから男をナパクタクへ送っていった。ナパクタクに着くと、男は岸におりた。舟乗りたちは積み荷を下ろすとカヤックをといて、すぐに岸を離れた。
男が陸(おか)の方を見ると、じぶんの村が見えた。もう一度海の方を見ると、もうバイダーラも舟乗りたちの姿もなかった。沖をシャチの群が泳いでいくのが見えるだけだった。男はシャチの国へいっていたってわけなのさ。家に送りとどけてくれたのはシャチだったのさ。おしまい。
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