ランペシカ村とリペシカ村があったとさ。ランペシカには六代生きてるばあさんがいて、夜も昼もこんな歌を、のどをふりしぼって歌っていた。
「ランペシカのものどもよ、リペシカのものどもよ、高いところへ家を移せ。海から津波が、山から津波がやってきて、ひとつに合わさりゃ村はおしまい」
夜も昼もこんな歌を、のどをふりしぼって歌っていた。
ランペシカ村の人たちは腹を抱えて大笑い。
「うそっぱちの占い、あきれた予言をするもんだ」
といって。
でも、リペシカ村の人たちは高いところへと家を移した。すると本当にものすごい高波が沖から押し寄せ、ものすごい山津波が山から押し寄せ、ひとつに合わさってランペシカ村をめちゃくちゃにしてしまった。
六代生きてるばあさんは、相変わらずのどをふりしぼって歌い続け、海原の上を村人と一緒に屋根に乗ったまま、ふたつの海の果て、みっつの海の果てへ流されていった。それでもばあさんはいつまでも歌をうたい続け、しまいにこういった。
「村人たちとわしが死んだら、海のじいさん神よ、死んだわしらのいやな匂いが、いつまでもおまえさまにまとわりつきますぞ。それが嫌なら、早くわしらを助けにきてくだされ」
六代生きてるばあさんはそういったのだ。それをきいた海のじいさん神は腹を立て、六代生きてるばあさんをむんずとつかむと、手のひらでもんで丸めて、六層下の地下の国に踏み落とした。
ところがある日国造り神の妹が、糸よりをするために糸掛け棒を地面に突き立てたら、その先が六層下の地下の国まで突き抜けた。なのに、その穴をふさぐのを忘れてしまったのだ。六代生きてるばあさんは、そこを通って抜け出して、またまた地上の国に顔を出した。
こうしてこの世に生まれたのが、セミというものなのだよ。