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世界昔ばなし135

时间: 2020-02-18    进入日语论坛
核心提示:モクセルさんの女房   あるところにモクセルという名の男がいて、女房と暮らしていた。この夫婦、その日の食べるものにもこと
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モクセルさんの女房
                                                                           
あるところにモクセルという名の男がいて、女房と暮らしていた。この夫婦、その日の食べるものにもこと欠く貧乏暮らしで、毎日けんかがたえなかった。
ある日のこと、たいそう派手なけんかのあげく、女房はつい、
「こんな暮らしもういやだ。わたしを実家にかえしておくれ」
といってしまった。売り言葉に買い言葉で、
「おまえがそうしたいなら勝手にしろ」
と亭主のモクセルもいった。
こうして夫婦は離婚の手続きをするために、イスラム教の長老のところへでかけていった。
モクセルの女房は、村では美人のほうで、まだ若かった。もちろんモクセルも若い。まだ子どももなかった。
さて長老はやってきた二人に、
「おまえさんたちどうしたんじゃ」
ときいた。
「このひとと別れたいので手続きにまいりました」
美人の女房にみとれていた長老は、それをきくとにこにこして離婚の書類をつくった。
手続きがすむと、モクセルはさっさと帰っていった。長老は女房を引きとめ、二人きりになると二十リンギットのお金を女房の手に握らせながら、
「夜のお祈りがすんだら会いにいきたい。あんた今晩はどこにいるんじゃ」
といった。
女房はちょっと考えてからこたえた。
「今まで住んでいた家ですよ。モクセルの……」
「モクセルはもうあんたの亭主じゃあるまいに」
「はい、もう別れたわけですから。でもあのひと、今晩は兄さんの家にいって泊まるそうです」
そういうとモクセルの女房はいとまごいして帰っていった。
途中までくると、むこうから偉いお役人がやってきた。お役人はモクセルの女房が美人なので、おもわず声をかけた。
「どこへいってきたんです、奥さん」
「長老のところまで」
「おや、どうして」
「離婚の届けをしてきました」
それをきくと、お役人はにんまりして、
「今夜はどこにもいかないでくださいよ。お祈りが終わったらお訪ねしますからね」
というと、二十リンギットさしだした。女房はそのお金をうれしそうに受け取って歩きだした。
しばらくすると、軍人さんがやってきた。軍人さんはモクセルの女房をひとめ見ると、たちまち心を奪(うば)われてしまった。
「どこへいってきたんだね」
「長老の家まで」
「どんな用事でだい」
「離婚の届けをしてきたんです」
「それはそれは。ところで今夜九時ごろあんたの家にいくから留守(る す)にしないでくれ」
そういって軍人さんは二十リンギットをとりだした。モクセルの女房はにこにこしてそのお金をもらうと歩きだした。手には六十リンギットのお金があった。すっかり金持ちの気分になった女房は、歩きながらふと考えた。
「そうだ、あのひととよりをもどそうかしら。お金があったときは、けっこうたのしかったもの。貧乏になったから出ていくなんてどうかしてたわ。別れてくれなんていわなきゃよかった。夫婦はどんな時もいっしょじゃなくちゃ」
家に帰り着くと、夫のそばにいって話があるときりだした。
「いまさら何を話しあおうというんだ。おれたちのことはけりがついたじゃないか」
「ちょっと待って。なにもそうむきにならなくてもいいじゃないの。あのね、わたし六十リンギット持ってるのよ」
女房は夫の前にお金をおくと、
「さっき別れるなんていったこと後悔してんのよ。もういちど仲直りしましょうよ」
「こんな大金、どこで手にいれたんだい」
けんか別れしたばかりなのにモクセルは目を輝かせて話にのってきた。
女房は何もかもはなした。長老とお役人と軍人さんが夜訪ねてくるということも。
「そりゃ、たいへんだ。おれは消えちまったほうがいいな」
「びくびくすることないわ」
と女房は落ちついていった。
「いい考えがあるの。あんたはわたしのいう通りにしてくれればいいわ」
モクセルは承知(しようち)した。
やがて女房は市場へ出かけ、おしろいや香水(こうすい)、それに鈴や杖(つえ)も買いこんできた。
その日の夕方、モクセルの女房は夫の服を脱がせ、体じゅうにすすをぬった。まっくろになった体にさらにおしろいで線をひき、おまけに手くびと足くびには鈴までつけた。それから、モクセルに部屋にかくれているようにいった。
「さあ、この杖を持って。今夜三人めの客がきて、しばらくしたらわたしの部屋にゆっくり歩いてくるのよ。いいわね。足を一歩出すごとに杖で床をならすの。そうすれば手と足の鈴も鳴るわ。つまり歩くたびに、クトック ゲンジリン クトック ゲンジリンという音がするわけよ」
モクセルはなんのことやらさっぱりわからなかったが、とにかく女房のいうとおりにすることにした。
女房はいそいで水あびをすると、いっちょうらをきた。髪をとかし、化粧して香水もつけた。もともと顔だちがいいから、たちまちきれいになった。
さて、長老は、夕方になると寺院で働く者たちを集めて、しっかり戸じまりをしておくようにいった。
「わしゃこれから村を見まわってくる。今夜あやしい者がきたら、捕まえてなぐっておけ。こりるようにな。わしゃ馬車で出かけるぞ」
そのころお役人もおなじように家の者を集めてからいった。
「今夜あやしい者がきたら、ようしゃなく捕まえて、痛いめにあわせなさい。わたしはこれから馬車で出かけなければならないから、たのんだよ」
軍人さんもやっぱり部下の兵士(へいし)たちを呼ぶと、
「今夜あやしい者がきたら、ひっとらえてうむをいわさずたたきのめせ。さて、わしはこれから馬車で出かけるからな」
といった。
八時ごろ、まず長老が馬車でやってきた。モクセルの女房はあいそよく客を迎えると、
「さあさあ、着ているものを脱いで、長老さま」
といいながら寝室につれていった。それからなんやかやしゃべりながら、長老の体にすすを塗りはじめた。長老はされるままにしているうちに、黒猿のようになってしまった。
八時半になった。馬車のちかづく音がして、すぐに人声とドアをたたく音がきこえた。長老はびっくりしていった。
「あれは誰じゃ」
「あの声はお役人さまじゃないかしら」
モクセルの女房が落ちついてこたえると、長老はひどくうろたえた。
「つごうが悪いなら、このランプを持ちあげて、あのすみに隠(かく)れていてください。見つからないと思いますよ」
長老はすばやくいわれたとおりにした。すすを塗られたせいで長老の姿はどうみても人間には見えない。ランプを置く飾り台のようだった。
モクセルの女房は戸を開けて、お役人を中にいれた。それから長老のときと同じように寝室につれこむと服をぬがせ、体じゅうにすすを塗りはじめた。
やがて九時半になるころ、馬車がとまって、
「奥さん、奥さん」
という声といっしょに戸をたたく音。
びっくりしたお役人、
「だれですか、あれは」
「軍人さんのようですよ」
モクセルの女房がまたまた落ちついてこたえると、お役人は困りきった顔になった。
「つごうが悪ければ、隠れていたら……」
そういいながら女房はお役人の手をとって、部屋のすみのランプのところへつれていった。そしてお役人の頭の上に小机をのせた。お役人は自分を隠してくれると思ったから、黙ってそれを両手でささえた。
モクセルの女房は戸を開けた。軍人さんだ。長老やお役人のときと同じように、女房はこんども客を寝室にさそい、あいそよく服を脱がせて体にすすを塗った。客はされるままになっていた。やがて三人めの黒猿のできあがり……。
そのとき、モクセルが杖と鈴をならして現れた。
「クトック ゲンジリン、クトック ゲンジリン……」
怪しげな音に、長老もお役人も軍人さんもぞっとした。おまけに白と黒のえたいのしれないいきものがちかづいてくる。
「ああああ……」
と長老は声をあげ、ランプをかかげたままあとずさりした。驚いたのはお役人、さっきまでランプ台と思っていたものが動きだしたのだ。驚いたのと恐いのとで、持ちあげていた小机を放りだした。それが長老の足にあたったからたまらない。うめき声をあげて転んだ。ランプが消えた。
この恐ろしい騒ぎに、軍人さんはあわてふためいて逃げだした。服のことも馬車のことも目にはいらず、裸で、それもすすでまっ黒なまま、いちもくさんに逃げかえった。
長老もお役人もおなじように、黒い裸のままつぎつぎにとび出していった。
三人は家に帰るなり、それぞれ、部下や兵士たちにふくろだたきにされた。
こうして、モクセル夫婦はもとのさやにおさまり、おまけにたいそう金持ちになった。まんまと三台の馬車を手にいれ、三人ぶんの服をせしめたんだから。それだけじゃない、服のポケットにはたんまりお金もはいっていたんだと。
長老もお役人も軍人さんも、おいてきたものをのこのこ取りに戻るわけにはいかなかったのさ。恥ずかしいからね。
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