ナスレッディン・アファンディが宮殿にやってきて、城壁の上を散歩している王様のチムールに、遠くからめんどりを見せた。賢者アファンディの奇妙な行動を見て、なにごとだろうと思ったチムールは、アファンディを呼び寄せるように命じた。
「なぜおまえはそのめんどりをわしに見せているのだ」
とチムールがたずねた。
「王様、わたしは賭けごとをいたしました。王様のお名前を使って賭けをして、このめんどりを手にいれました。これでおいしいスープができましょう。王様に差しあげたいと思いまして、もってまいりました」
チムールはアファンディの贈り物に気をよくして、礼をいった。
それから一週間して、チムールがまた城壁の上から見ると、アファンディがよく太った羊を引いてうろうろしている。
「アファンディをここへ呼んでまいれ」
さっそくアファンディがやってきた。
「この羊を王様に差しあげることをお許しください」
「おまえはわしの名前を使って、またも賭けに勝ったというのか」
「そのとおりでございます。王様のお名前は幸運をもたらします。この羊ですばらしくおいしい焼き肉ができましょう」
チムールはこの羊を台所へとどけるようにいいつけた。
ところが三度目、アファンディは賭博師をふたりつれて、やってきた。
「どうしたのだ」
とチムールがたずねると、
「それが、王様、この男たちと賭けをいたしまして、わたしはまた例によって王様のお名前をお借りして、賭けました。ところがです。わたしは幸運に裏切られて、金貨五百枚負けてしまったのです。どうすればいいのでしょう。ほとほととほうにくれております。わたしには金はなく、二人は払えといってききません」
チムールは笑って、アファンディに金貨五百枚渡してやるように命じると、
「以後わしの名前で賭けをしてはならぬ」
といいわたした。