これは、創造主があらゆる生き物をお造りになった大昔の話だ。そのころ、生き物たちはたがいに話し合うことができ、みな兄弟のように仲良く暮らしていた。長い間すべてがうまくいっていたため創造主も安心していたが、いつしか獣や鳥や魚たちが喧嘩を始めるようになった。みながわがままになり、創造主が与えた物を分け合うこともしなくなった。事の成り行きを心配した創造主は息子のガハルスを呼んで、こう命令した。
「わしは地上で起こっていることが、心配でならない。お前が行って、様子を見てくれないか。お前に霊力をさずけるから、わしの意にそぐわぬ者がいたら、姿を変えてやれ」
そこで、ガハルスは弓矢をたずさえ、地上に降り、カヌーに乗って海に漕ぎ出した。
ある日のこと、ビーバーとミンクが漁をしていた。一日中漁をして、春鮭をたくさん捕まえた。日が暮れたので二人が岸に戻ろうとすると、舟は砂洲に乗りあげてしまった。彼らは疲れていて、お腹もすいていたので、捕った鮭を砂洲の上で焼いて食べることにした。火を起こし、鮭を串刺しにして焼けるのを待つ間、二人は火のそばに寝転び、うとうとした。
そこをガハルスが通りかかった。彼は長旅のために疲れ、お腹もすいていた。見れば、脂ののった鮭があぶってあり、火のそばでビーバーとミンクが眠っている。ガハルスは、
「鮭が焼けてるようだが、分けてくれないか」
と、二人に声をかけた。すると、ビーバーとミンクはすぐ目を覚まして、驚いた様子で彼を見つめた。だが、彼が誰かも知らず、食事を分けてやろうとはしなかった。
ビーバーは鮭をちらっと見てから、
「いや、まだ焼けてないから、だめだよ」
といった。さらに、ガハルスが火のそばに腰をおろして待っている間も、ビーバーとミンクは回りで火をつっついたり、薪を集めたりして、知らんぷりをした。二人は、このよそ者が待ちくたびれて、早くいなくなればいいと思っていた。
しばらくして、ガハルスは、
「今度は焼けたようだが……」
と教えてやると、ミンクがこう答えた。
「いや、まだだよ。もう少し焼けてからにしよう」
これにはガハルスも怒ってしまい、わがままなビーバーとミンクの姿を変えてしまう決心をした。彼は、霊力で二人をぐっすり眠らせた。その間、ガハルスは鮭を少し食べ、脂ののった鮭の皮を二人の口の回りに張りつけて固いほっぺたを作り、口の中には骨を差し込んで歯にした。さらに、鮭のとげを二人の顔にくっつけてほお髭にした。また、鮭の皮で平らな尻尾を作り、歯を長くして、今のようなビーバーにしてから、こういった。
「おまえは、これからずっと木をかじって生きるのだ。木を食糧にし、家も木で作るのだ。そして、一生、木で作った家の周りで暮らすがいい」
それから、ガハルスはミンクの体を引っ張って細長くすると、こういった。
「おまえは、これからずっと小さいままでおり、敵から身を隠して生きるのだ」
ビーバーとミンクは、ガハルスにこれまでの非礼を詫びようとしたが、言葉が出ないで、声にもならない小さな音を出しただけだった。
今でも池や小川のあたりにいけば、ビーバーやミンクがいる。ガハルスが命じたように、陸と水の境で暮らしているよ。