チュクチャはアジア大陸の東北端に位置するチュコトカ半島に住む民族で、海でクジラやアザラシなどの海獣を捕ったり、ツンドラで野生トナカイを捕ったりして暮らしてきました。
この話は一九四八年にウエレン村の六十二歳の男性ウヴァタグィンがP・Ja・スコーリクに語った話です。
ここでは人びとに光を取り戻す文化英雄として登場するのは人間ですが、他の類話ではワタリガラス、セキレイ、ウサギなどの動物がこの役割を担うことが多いようです。この話の主人公である女性をエスキモーの海神セドナとする話もあります。北アメリカのインディアンに伝わるワタリガラス神話の中にも類話があります。
チュクチャの女性は今でも手まりに太陽や、月や、星のししゅうをしますが、その風習はこの神話に由来するといわれます。
美しく厳しい極北の大自然を背景に生まれたこの話がめでたし、めでたしで終わりながら、どこかもの悲しく哀調をおびているのは、冬至の前後しばらくまったく太陽が姿を見せず闇に包まれる、この地方らしい特色だといっていいでしょう。