語り手はエゴール・アレクセーエヴィチ・ドコレフという五十二歳の男性で、M・G・ヴォスコボイニコフがブリャート自治共和国バウント区において一九四七年に記録した話です。
エヴェンキは東シベリアの広大な地域に居住し、狩猟、あるいはトナカイ飼育を中心とした生活を営みつつ、その合間に川や海で漁撈をして暮らしてきた民族です。
エヴェンキの猟師は森の小屋の中で焚き火を囲んで、動物昔話を語りあいました。動物も人間と同じように昔話が大好きで、話を聞きに小屋のまわりに集まってくると考えたのです。猟銃がなく、弓や槍で獲物を捕っていた時代の狩りというのは人間と動物の知恵比べでした。動きの鈍いカワメンタイが、すばしっこくて、ずる賢いキツネをまんまとだましてやっつけるこの話も、狩猟の前夜に猟師たちに好んで語られた話のひとつだったにちがいありません。
アフリカの「亀とウサギ」もこれと同じタイプの話です。