M・G・ヴォスコボイニコフがブリャート自治共和国カチューグ区ヴェルシノ=トゥトゥラ村でA・I・シチャーポフという二十六歳の男性から一九六〇年に記録したものです。
肉を親指ほど食べただけでおなかいっぱいになってしまうほど体の小さいテへルチケンと、ずうたいが大きく、牛一頭たいらげてもまだ足りないほど大食いのマンギとの組合わせがおもしろい話です。テヘルチケンは魔物を少しもこわがっていず、むしろ魔物につかまるのを楽しんでいるようにさえ見えます。家の中をかけまわったり、お粥を食べてさわぎまわる魔物のこどもたちのあどけなさ、そのかわいいこどもたちの肉を食べさせられて、「腕を食ったら腕が痛み、足を食ったら足が痛む」というマンギ夫婦の人間くささもこの話にふしぎな魅力を添えています。
マンギの子どもたちをまんまとだまして縄を解かせ、反対に彼らを殺して煮て、マンギ夫婦に食べさせる部分は日本の「かちかち山」を想い出させます。これとよく似た話はアイヌにもあります。