語り手はイミンチャ・パシャといい、一九〇五年にブラワ村で生れたホルゴイ氏族の女性です。読み書きはあまりできません。この話はO・P・スーニクが一九六八年七月にドゥディ村で記録したものです。
ダ、ハジラチというのはウリチの昔話の語りはじめと段落のはじめに挿入される決り文句です。現在ではすでに確かな意味はわからなくなっていますが、「これから昔話がはじまりますよ。よくきいてください」、あるいは「昔話はまだ続いていますよ。よくきいてください」といった意味がこめられているといわれます。
カルーガというのはチョウザメの一種です。
ウリチはソ連邦の極東を流れるアムール河の下流域に住み、漁業と狩猟によって暮らしてきた民族で、一九七九年の調査によれば人口はわずか二千六百人です。ウリチ語を母語とするのはその中の三八・八パーセントで、七〇年の六〇・八パーセントを大きく下まわっており、ウリチの民族としての存続が危惧されます。
日本の「隣の爺」型と呼ばれる「雁取り爺」やアイヌの「パナンペ・ペナンペ」と共通点が多いこのタイプの話はウリチ以外のツングース系民族においても伝承されています。