これもカムイユカラ(神謡)とよばれるもので、これの本来のリフレインの言葉はハンチキキ・ハンチキキです。でも、これを謡(うた)ってくれたおばあちゃんが昔をなつかしんでコーワキチ(小さいわきちさん)と謡ったので、そのままのかたちで載せました。若いころ、「わきち」さんという人がいて、それにちなんで、リフレインの言葉をかえたのです。
なお、沙流地方では、同じハンチキキというリフレインの言葉で、雀の酒造りの話が伝承されています。
もともとアイヌの人々は野や山の幸、川や海の幸をとって生活していたのですから、飢饉といえば魚が川にあがらなくなったり、鹿や熊がとれなくなったりすることでした。ところが、キリギリスや雀の酒造りの話は穀物にまつわるものです。これらの話は、すこしずつ穀物をつくりはじめた、そのころに生まれたものかもしれません。
ところで、神の窓というのは、上座のところの、ふだんは閉められている小さな窓のことです。この窓はアイヌの人々にとっての神様、つまり熊などがとれたときに開けられ、神様の頭がここから家の中に入れられるため、神の窓といいます。神様が人間のところを訪れるときは、この窓を通って家の中に入り、上座で火の神とよもやま話をするのだと考えられているのです。