これは、葉恭偉(イエコンウエイ)が聞き知っていた話をまとめたもののようで、広州の各村で語られているという注があります。
人間の娘がヘビに嫁入りするこの話は、中国では「蛇郎」(ヘビむこ)と呼ばれ、もっともよく知られた話のひとつです。姉妹のうち、だれがヘビの嫁になるか、という時の姉妹たちの言いぐさ、妹になりすました姉が櫛を使っていると、妹の仮身である鳥が来てうたう歌などは、各地の類話にも共通して見られるものです。
ヘビを水の神として信仰したり、ヘビに人身御供をささげたりという話は、古来あり、この話も本来そのような信仰を反映したものだったのでしょう。しかし、話としては、後半の幸せな結婚をめぐる姉妹の葛藤に、より興味がもたれていたようで、この話でも、鳥、植物、金の像などへの妹の転生の過程がくり返し述べられています。この部分はまた、中国に古くから伝わるシンデレラ型の話の後半部としても、よく知られています。