これは、雲南省建水県で水滴(シユイデイ)と熊興祥(シヨンシンシヤン)が記録して整理した話です。
ハニ族は、雲南省南部の山岳地帯に住むイ語系の民族で、主に棚田での稲作や茶の栽培に従事しています。動物息子の話は世界中に見られますが、チベット、イ語系の諸民族では、神の仮身であるカエルが生まれる話が多いようです。このハニの話でも、ガマは最後に犁底星(どの星に相当するのかは不明)だと名のっており、笑うだけで太陽を火の球に変えるなど、特別の能力を存分に発揮しています。
なお、初めのところでトジマイ(ツツジ)の花で年を数えるいいかたをしていますが、鳥の鳴声や植物の芽ぶきなどで季節を判断したハニの人々には、山一面に真っ赤に咲くトジマイは初夏の到来を告げるたいせつな花だったのです。ハニにはこのトジマイをうたった歌がたくさんあります。また終りのところではガマが王女の心を試そうと、恋のかけ合い歌をうたいかけていますが、ハニの若者はもっぱらこのかけ合い歌で恋人を見つけました。