語り手のシャンカル・ダスは、当時、インド最北端ジャンム・カシミール州の冬の州都ジャンム市から更に西北に車で一時間近く入った山間の町ウダンプルの高校生でした。この話は、お祖母さんのラニ(六十歳)から聞いたということです。この話から「三つの魔法の品とふしぎな薬草」までの五話はすべてドーグリー語で採録されました。ドーグリー語というのは、ジャンム市を中心に、現在、約百三十万の人たちが使っている、インド・ヨーロッパ語系統の方言で、極く少数の例外を除けば、印刷に付されるようになったのは、一九四七年のインド独立以後のことです。この話の類話は同州にも北インドの他の州にもあります。主人公のバラモンというのは、インドのカースト制度中で最高位の、本来祭祀を司る僧侶階級のことですが、今ではいろいろな職業についています。類話の中には主人公を木こりとしたり、主人公とライオンが知り合う経過を詳しく説明したり、ライオンの家来に白鳥やカラスを登場させたりしている複雑な例もあります。それらに較べると、ここに紹介した話は簡にして要を得ていると言えるでしょう。
●バラモンとライオン
語り手のシャンカル・ダスは、当時、インド最北端ジャンム・カシミール州の冬の州都ジャンム市から更に西北に車で一時間近く入った山間の町ウダンプルの高校生でした。この話は、お祖母さんのラニ(六十歳)から聞いたということです。この話から「三つの魔法の品とふしぎな薬草」までの五話はすべてドーグリー語で採録されました。ドーグリー語というのは、ジャンム市を中心に、現在、約百三十万の人たちが使っている、インド・ヨーロッパ語系統の方言で、極く少数の例外を除けば、印刷に付されるようになったのは、一九四七年のインド独立以後のことです。この話の類話は同州にも北インドの他の州にもあります。主人公のバラモンというのは、インドのカースト制度中で最高位の、本来祭祀を司る僧侶階級のことですが、今ではいろいろな職業についています。類話の中には主人公を木こりとしたり、主人公とライオンが知り合う経過を詳しく説明したり、ライオンの家来に白鳥やカラスを登場させたりしている複雑な例もあります。それらに較べると、ここに紹介した話は簡にして要を得ていると言えるでしょう。
語り手のシャンカル・ダスは、当時、インド最北端ジャンム・カシミール州の冬の州都ジャンム市から更に西北に車で一時間近く入った山間の町ウダンプルの高校生でした。この話は、お祖母さんのラニ(六十歳)から聞いたということです。この話から「三つの魔法の品とふしぎな薬草」までの五話はすべてドーグリー語で採録されました。ドーグリー語というのは、ジャンム市を中心に、現在、約百三十万の人たちが使っている、インド・ヨーロッパ語系統の方言で、極く少数の例外を除けば、印刷に付されるようになったのは、一九四七年のインド独立以後のことです。この話の類話は同州にも北インドの他の州にもあります。主人公のバラモンというのは、インドのカースト制度中で最高位の、本来祭祀を司る僧侶階級のことですが、今ではいろいろな職業についています。類話の中には主人公を木こりとしたり、主人公とライオンが知り合う経過を詳しく説明したり、ライオンの家来に白鳥やカラスを登場させたりしている複雑な例もあります。それらに較べると、ここに紹介した話は簡にして要を得ていると言えるでしょう。