●三つの魔法の品とふしぎな薬草
「半分小僧」と同じシャルダーの語りです。魔法の品物の入手・紛失・回復という大きな主題に、変身の効力のある食物(ここでは薬草)のモチーフが結びついた物語(AT566)で、インドだけでなく世界的に流布している型ですが、ジャンムでもこの時期に、この話を含めて六つの類話が採録されました。そのうちの五話までが、この話と同じように、早死にする宿命の少年を主人公とし、その後の展開でも類話間の異同は比較的少なく、ジャンムに特徴的な地方型をもつ複合説話の好例の一つです。ここに紹介した話は、最後のところが、少し先を急いで素っ気なくなってしまっているきらいはありますが、六話の中では一番よく纒まっていて標準的な例と言えるでしょう。文中で、生き返った少年がつぶやく「ラーム、ラーム」というのは、インドで神様のように崇められている王様の名前で、日本の「なむあみだぶつ」とか「なむまいだ」のように、神仏への敬虔な思いを込めて、インド人がよく口にする言葉です。また、「九ラックもする首飾り」が出てきますが、一ラックは十万ルピーで、インドの大金の単位です。「十ラック」と言わないで、「九ラック」というところが面白いですね。