この話はカメルーンに住むバフト人に伝わる話です。
ウサギと亀の競走は、日本でも有名な話のひとつですが、このアフリカの話ではウサギが油断したからではなく、亀が知恵を働かせたおかげで勝ったことになっています。
この話の亀のように、人一倍知恵の働く主人公が、その頭を使っていたずらを仕掛けたり、うぬぼれ者の相手をこらしめたりという話は世界の各地に見られます。そうした話の主人公は、ひとまとめにしてトリックスター(いたずら者)と呼びますが、トリックスターとして登場する動物の姿形はいろいろで、たとえばアフリカの場合、地域によって蜘蛛(クモ)やウサギのこともあります。この話の中ではやり込められる側のウサギも、別の地方にいけばトリックスターとして、ライオンや象、人間などを手玉にとり、人々を楽しませているのです。