これは、ナイジェリア南西部のヨルバ人に伝わる神話の一部分です。本文中にも出てくるように、ヨルバは太陽の神や月の神など数百にのぼる神々を信仰しており、その点では日本人に似ているのですが、それらの神々の中でもエシュという神様はちょっと変わっています。この神様は、大の悪戯好きで、トリックスターのようにいろいろな悪さをして、ほかの神様や人間たちを困らせると考えられているのです。
ここに取り上げた話は、エシュのそうしたトリックスター的な側面をよく表したもので、彼のせいで太陽と月の動きが狂い、昼と夜が逆転してしまうというのですから、その悪戯ぶりも徹底しています。エシュの悪戯については、ほかにも面白い話がたくさんあるのですが、この神様はいつもいつも悪戯ばかりやっているわけではありません。
エシュの本来の仕事は、人々が神様に捧げた供物を運んだり、人々の願い事を神様に伝えたりすることで、彼がいなければ神様たちはみんな飢えてしまい、人間も神様の御利益にあずかれないというくらい、大切な存在なのです。それほど重要な位置にある神様が、悪戯好きでみんなを困らせては喜んでいるというのは、いかにも冗談好きのヨルバらしいという気がします。