この「天上の宴会」の話は南米のアンデス地域に住む原住民ケチュア族に広く伝えられているものです。地方色豊かな話で、ラクダ科の草食動物ビクーニャや、とうもろこしを発酵させてつくるチチャ酒や、この繊維から縄をつくるチャグアルや、水洗いした小さな粒をスープやかゆにして食べるキノアなど、めずらしいものが登場します。
ビダルがアルゼンチンで集めた二十六話のうち、二十話はこの話のような食物の起源の話で、そのうちの六話は主人公が狐ではなく虫になっています。虫の場合は天上から落ちたために皮膚にしみができたというように、しみの由来を説明する話になっています。
語り手は、アンデス高地に住む当時六十四歳の読み書きのできない原住民女性レウカリア・チョコロバル・デ・フローレスです。この語り手は現在、ケチュア語は話しませんが、ところどころにケチュア語がまじる、かなりなまりのあるスペイン語で語っています。屈託なく世間話をしているような口調です。