南米のアルゼンチンのミシオネス地方はブラジル南部とパラグアイの国境に接している所で、モチノキ科の常緑樹、マテ茶の木が自生する所です。この地方に住む原住民グアラニー族は、マテ茶を薬として使っていました。また、この地域はスペイン人によるキリスト教の布教が行なわれた所でもあるため、マテ茶の木の起源がキリスト教の神と結びついて語られています。
「マテ茶の木の起源」の話は、神様を手厚くもてなしたお礼に、娘を役に立つマテ茶の木に変身させてもらったというテーマが中心となっています。娘の変身の理由の一つは、このお話のように、父親が年をとって娘を養うことができないからというものの他に、娘を美しいままにしておきたいからというものがあります。アルゼンチンでは、「マテ茶の木の起源」に加えて、この乙女がマテ茶の木の精となってマテ茶畑に出没すると信じられています。
ここでとり上げた「マテ茶の木の起源」は、当時三十八歳の原住民で、グアラニー語とスペイン語の両方を話すドミンゴ・ダニエル・メジェルという一九一三年生まれの男の人が語ったものです。「カア・シ(マテ茶の木の母さん)」は、同じミシオネス地方に住む四十五歳のマテ茶摘みの男性キンティン・アクーニャが語った話です。カア・シが実在するものとして生き生きと語られています。