返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

聖岩 Holy Rock03

时间: 2020-02-21    进入日语论坛
核心提示:踏切 いま私は東京世田谷の、私鉄電車の線路ぎわに住んでいる。家から二十メートルほどのところに踏切がある。車は通れないとて
(单词翻译:双击或拖选)
踏切

 いま私は東京世田谷の、私鉄電車の線路ぎわに住んでいる。家から二十メートルほどのところに踏切がある。車は通れないとても小さな踏切。人もあまり通らない。二階の寝室の小窓から、それが正面に見おろせる。
昼闇は何気なく通っているのだが、夜になると青白い蛍光灯に照らされて、住宅地の薄ヤミのなかにそこだけが、あやしく浮かび出す。赤黄黒の三色に濃く塗り分けられた遮断の棒も、異様に鮮やかだ。
たまに早目に寝室に上がると、終電車が通るのに出会う。赤い信号灯が点減し、遮断棒がおり、電車が轟音とともに走り過ぎる。遮断棒がゆっくりと上がったあと、人影が渡ってゆくことがあり、だれも通らない静寂のなかに、土手の桜が一本だけ妖しく満開のことがあり、赤い満月が不気味に昇ることもある。
それだけなのだが、私はいつも息をつめて、その小さな光景に魅入られている。何なのだろう。古来ふたつの道が交差するところは、一種魔的な場所とされてきた。「逢魔が辻」という言葉があったかどうか。十字の形は世界中で広く神秘的な記号でもあった。
鋼鉄のレールをひた走る銀色の電車は、自然の掟とか歴史の必然とか、そういう何か絶対的なものの象徴のように、深夜の私には感じられる。自然の掟は死を含む。
その合間を、その交差する道を、私たちはしばしの間、通り過ぎることを許されている——という事態が、さり気なくありありと青白い光に照らし出されて、眼下にある。
三色の遮断棒が上がったあと、うつむいて歩く年輩の男があり、腕をからめ合って小走りに駈けてゆく若い男女もある。
見知らぬその人たちがとても身近だ。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%