返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

孤独のとなり70

时间: 2020-02-24    进入日语论坛
核心提示:毛虫にさえ学ぶことができる私は生来意志薄弱な、怠惰な者である。何をやっても根気がない。長つづきがしない。すぐに飽きる。あ
(单词翻译:双击或拖选)
毛虫にさえ学ぶことができる

私は生来意志薄弱な、怠惰な者である。何をやっても根気がない。長つづきがしない。すぐに飽きる。
あれは小説「氷点」が入選した年の秋だった。私は近所を散歩していた。すると道路を這《は》っている毛虫が目にはいった。毛虫は凹《くぼ》んだ轍《わだち》の跡にさしかかった。そして、毛虫からみると絶壁のようにそそり立っている所を越えなければならない。毛虫は一心にのぼろうとするのだが、途中までのぼると、あっけなく下にころがり落ちる。またのぼる。また落ちる。そしてまたのぼる。だがまた落ちる。
いったい幾度、あの毛虫は途中までのぼって、また落ちたことだろう。私はよほど、棒切れででも助けて、そこを越えさせてやろうかと思った。だが待てよと、私は毛虫のすることをじっと見つめていた。その土の壁は、毛虫の身長の五、六倍はあったろう。私たち人間が、一〇メートルの絶壁をよじのぼるのと、同じような難事業である。
しかし毛虫は、飽きずに、こりずにまたのぼる。私は途中で、もうその場を離れようと思ったほど長い時間だった。だが遂《つい》に、実に遂に、毛虫はその高い土をよじのぼったのである。
私は深く感動した。「あいつは虫けらのような人間だ」などというが、冗談じゃない。虫といえども、私たち人間よりも、こんなにも根気強いものなのだ。学ぼうと思えば、毛虫にさえ学ぶことができるのだと私は感動しながらその場を離れた。
二作目の長編にとりかかっていた私にとって、この毛虫の姿は、大きな励ましとなった。ともすると、怠けたくなる時、わたしはあの毛虫の姿を思い出す。そして、毛虫よりも劣った意志の持ち主であることを恥ずるのである。小野道風が、柳に飛びつく蛙《かえる》の姿に学んだ故事があるが、私もまた同じような体験をしたのである。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%