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海嶺03

时间: 2020-02-28    进入日语论坛
核心提示:開の口     三 夜空を仰いで、岩松は胴の間に突っ立っていた。天《あま》の川《がわ》がぼおっと白砂を撒《ま》いたようだ
(单词翻译:双击或拖选)
開の口
     三
 夜空を仰いで、岩松は胴の間に突っ立っていた。天《あま》の川《がわ》がぼおっと白砂を撒《ま》いたようだ。
「星屑《ほしくず》か」
岩松は吐き捨てるように呟《つぶや》き、しかし心の中では、
(星って一体何だろう)
と、思った。小野浦出の水主《かこ》たちがみんな陸に上がって、船の中には岩松と、そして伊勢若松の千之助、新居浜《にいはま》の勝五郎の三人だけだ。辰蔵も小野浦の者ではなかったが、船頭の重右衛門について、今夜は小野浦泊まりだ。
船の中はひっそりとしている。千之助と勝五郎は水主部屋で花札でもひいているのだろう。岩松は小野浦の町の灯に目をやった。
低い丘を背に、小野浦の灯が点々と見える。船から十二、三丁|程《ほど》の距離だ。ひときわ明るいのは、遊郭《ゆうかく》のある所だろう。岩松はごろりと、胴の間に仰向けに寝た。空がのしかかるように、岩松の上にあった。波がひそひそと船腹を洗う。伊勢湾の海は穏やかだった。
岩松はふっと、熱田にいる妻の絹を思った。目の涼しい、やさしい口もとの絹は、師崎の女だった。知多半島の突端にある師崎は、千石船《せんごくぶね》の碇泊《ていはく》する港で、船宿もあれば水主《かこ》長屋もあった。そして、身を売る女たちもいた。絹はその私娼《ししよう》の一人だった。
(因業《いんごう》婆め)
岩松は絹の母親かんの吊《つ》り上がった目を思い出す。かんに強いられて、絹は体を売っていた。絹が岩松から金を取らなくなった時、それを知った母親のかんが、絹の髪を手にまいて引きずりまわした。ある日岩松は、そんな場面にぶつかって、驚いてとめに入った。かんは岩松にむしゃぶりつき、岩松はかっとしてかんの頭を殴《なぐ》りつけた。かんはその場にうずくまったが、その翌朝かんは死んでいた。医者は卒中だと言ったが、岩松は自分のこの手で殴り殺したのだと思っている。
「ふん、化けて出るんなら出てみろ」
星空を眺《なが》めながら、岩松はそれが癖《くせ》の口を歪めた。
かんの死んだあと、絹は岩松と一緒に熱田に来た。そして今は、岩松の父母に仕えて留守を守っている。
とその時、櫓《ろ》の音が聞こえて来た。岩松は立ち上がった。この時刻になれば、いや、もう来る頃《ころ》だと思っていたのだ。岩松は船べりに寄って海を見おろした。二|隻《せき》の磯船《いそぶね》に五つ六つ、女たちの白い顔が闇《やみ》の中に浮いていた。
「三人でいい」
抑揚《よくよう》のない声で岩松が言った。
「たった三人?」
がっかりした声が返って来た。
「おう、三人だ」
岩松が答えた時、開《かい》の口のひらく音がし、
「待ってたでえ」
新居浜の勝五郎の声がした。女たちが三人、次々に縄梯子《なわばしご》を伝って上って来る。他の女たちは思い切り悪く、
「もう一人ぐらい、ええだろうに」
と声を上げた。
「一人で二人は抱けんでのう」
勝五郎の朗《ほが》らかな笑い声がした。
女が一人ひっそりと胴の間に入って来た。岩松はふり返って女をじろりと見た。柱に吊《つ》るしたほの暗い灯りに、女の顔がおさなかった。
「何を見てた?」
女が寄ってきた。
「小野浦の灯だ。お前の家はどのあたりだ?」
「見えんわ。あの右の丘の蔭《かげ》やで」
女は甘えるように言った。
「年は幾つだ?」
「十六」
「十六か。いつ嫁に行く?」
「来年の秋までに行きたい思うている」
「来年の秋までにか」
岩松は、不意に女の肩を荒々しく引き寄せた。赤く塗った唇《くちびる》がかすかにあいている。
このあたりの娘たちの中には、自分の嫁入り道具を買うために、千石船《せんごくぶね》の男を相手に体を売る者がいる。それはいわばしきたりで、咎《とが》める者はいない。娘たち自身も、そのことで心を痛めることもない。だが岩松は、かすかに口をあけて自分を見上げている娘の顔を見て、ふっとむなしい思いがした。妻の絹が親のために身を売っていたのとちがうのだ。女にとって、男に身を委《まか》すとは一体どういうことなのか。
岩松は肉づきのよい女の体を軽々と抱きかかえて胴の間の板敷きに横たえた。
「こんな所で?」
答えずに岩松は、娘の横に仰向けに寝た。再び夜空がのしかかった。
「あんた、変わっとるね」
しばらくじっと夜空を見ている岩松に、娘は頭をもたげて言った。
「人間は一人一人ちがうでな」
怒ったような言い方だった。
「何を怒っとるの?」
「何も怒ってはいないさ」
言いながら岩松は、自分がいつも何かに腹を立てているような気がした。かんの死に会ってから、こんな人間になったような気がする。
(いや、生まれつきかな)
岩松は、天の川をよぎる雲を見ながら思った。
「どうしてあんた、わたしを抱かん?」
不思議そうに娘は言う。
「今に抱く。その気になればな」
「その気になれば?」
船のどこかで、女の笑う声がした。
「あんた、どこの生まれ?」
「知らん」
「知らん? 自分の生まれた所を?」
「知らん。俺はな、熱田神社の境内《けいだい》に捨てられてあったんだ」
「ま、ほんと? うそばかり言って」
「どうしてうそだ」
「どうしてって……じゃあんたに親ごさんはないの」
「捨て子の俺を、拾ってくれた親はいるさ」
岩松は、父の仁平と母の房の顔を胸に浮かべた。仁平夫婦には子供がなかった。瓦葺《かわらぶ》きの職人だった仁平は、仏の仁平と言われるほど柔和《にゆうわ》な男だ。その仁平が熱田神社に朝早く詣《もう》でに行った。新しい仕事にかかる時、仁平は必ず神社に参詣に行く。そして松の根方で泣いていた捨て子の岩松を拾って、育ててくれたのだ。捨て子の珍しい時代ではない。見て見ぬふりをしていれば、やがてその子の息は絶える。しかも、岩松が捨てられたのは、秋も深い十月末の朝であった。
「よく犬にも食われなんだものよ」
近所の者が、井戸端《いどばた》で岩松のことを話し合っているのを聞いたのは、岩松が十二の時だった。戸をあけて手を伸ばせば、向かいの家に届くような狭い露地に、岩松は育ち、今も住んでいる。
仁平と共に、瓦葺き職人になるつもりだった岩松が、船に乗りたいと思うようになったのは、その話を聞いてからだ。
(なぜ海に出たかったのだろう)
岩松は十三の時から千石船《せんごくぶね》に乗った。それから十二年、岩松は海に生きて来た。別段育ての親の仁平と房がうとましくなったのではない。だが確実に、岩松の性格にかげりができた。そのことに岩松自身気づいたのは、船に乗って三年ほど経ってからだった。
「何で黙っている?」
女が身をすり寄せて来た。と、岩松はがばと身を起こした。そして財布を腹巻きの中から出すと、女に何がしかの金を与えた。
「あら、先にお代をくれるの?」
女は不思議そうに言った。
「帰ってもいいぜ」
岩松はぶっきら棒に答えた。
「まあ! 帰れって。あんた、わたしが嫌《きら》いなの」
「嫌いも好きもない」
「いやだわ、何だか」
女は体をねじらせた。岩松はぷいと立ち上がって、船べりに近づいて行く。女は黙って、寝たまま金を数えはじめた。波の音がひそひそと聞こえるばかりだ。
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